駄文・駄洒落・雑記

2023/09/21

昼行燈4

Tuki_20230921005501  何処までも広がる田圃の連なり。嘗ては一面の麦畑だったとは信じられない。今は農閑期。田植え前。嵐の前の静けさ。何処行く当てもなく歩いていた。まだ明るかった空が既に宵闇に沈みかけている。畦道や用水路の縁を辿っていたけど、月影のない筋は次第に曖昧の闇に呑み込まれていく。

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2023/09/20

虎が犬たちを

(夢……長い前段)何処かの屋敷…朽ち果てた屋敷が苔むした石畳の道を挟んだ向かい側にある。自分は手前の家にいた。一人、いつしか石畳の道に立っている。禁断の屋敷が気になってならない。高い塀に囲まれた屋敷。苔やら蔦やらが方々に生している。塀の一角が窪んでいてそこが段々になっていて入口になっている風に見えた。

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2023/09/19

昼行燈3

Suzume_20230919234301

 吹雪いていた。家の中にいるはずなのに猛吹雪だ。雪の粉が顔面に叩く。冷たい! 氷の礫。
 が、何故かまるで痛くない。冷たくもない。まして寒くなんかない。まるで浮き粉だ。それとも小麦粉なのか。微かに香りさえ漂ってくる。表面の光沢が反射し合って眩しいほどだ。

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2023/02/09

なにがゆえの悪夢だった?

 自分のトラウマは、物心付いたかどうかの頃の、手術台でのこと。横たわって全身麻酔されて意識を失いそうで消え切らない末期の眺め。それは闇の中の真上の眩しすぎる照明。手術台の上の闇と光の交合。煌めくメスと肉の深き交合。口唇口蓋が深く切り裂かれて、心身の中までが抉られているという感覚。吾輩はただ無力だった。 [「手術台の上の闇と光の交合」より]

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2022/10/25

観る前に飛ぶんだ

Segan  沈黙の宇宙。闇の奥に佇む湖の誘惑。眠りに陥る寸前の恐怖に似た感情の委縮。

 何を怖れて居る。溺れる苦しみ? 何を今さら。あるのは真っ赤な、それこそ燃え上がる炎の揺らめきに過ぎないのだ。際限のないぬめぬめした壁面の洞窟を潜り抜ければ、待っているのはお前の夢の躯。

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2022/07/31

野良猫の怪…源五郎の夏

Nekofan1_20220731200101 ← 真夜中の散歩…? ( by なずな)

[源五郎の夏]

 夕方、シャワーを浴び、扇風機の風で火照った体を癒していたら、不意に虫が飛び込んできた。真黒な大きめの虫。羽音がブーンと。虻か熊蜂か。そのうち、奴は正体を現した。なーんだ、源五郎(正確な名称不明。仮称である。昔、そんな名の昆虫がいたような)だ。光沢のあるボディが美しい。図体がデッカイ。我が茶の間を飛び回る。奴も出口を失って、正体を失っているのか。吾輩の方が冷静になった。 

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2021/11/08

あの日から始まっていた (* 番外編)

Pla  「あの日から始まっていなかった


 ぬたが好きである。食べ物のぬたではあく、ぬたという言葉が好きなのだ。ぬたはぬめった感じからして何処かぬめりに通じるところがある。あくまで語感の上での連想に過ぎない。郷土料理として愛している方たちには申し訳ない。吾輩も好きである。
 ぬめりからしてヒルやナメクジ、ミミズなどを連想する。殻を忘れたカタツムリとか。これらは決して仲間なんかじゃないが、似た者同士の輪に加えたくなる。

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2021/09/22

あの日から始まっていた (12 匂いを嗅ぐ)

「匂いを嗅ぐ」

 

…そんな自分の肉体的事情があるからこそ、匂いにひとかたならぬ関心があるのかもしれない。口呼吸で匂いを嗅ぐわけにもいかず、一体、健常者として鼻呼吸をされている方というのは、つまり、世の大概の方というのは、どんな正常な感覚生活を送っておられるのか、気になってならないのだが、殊更に訊くわけにも行かないし、また、敢えて尋ねるようなことでもないのだろう。

 

 健常であるということは、それが当たり前のこととしてその健常さを生きているわけで、その健常さを自覚する必要も何もない。

 

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2021/09/13

あの日から始まっていた (10 明けない夜に)

 エロティシズムへの欲望は、死をも渇望するほどに、それとも絶望をこそ焦がれるほどに人間の度量を圧倒する凄まじさを持つ。快楽を追っているはずなのに、また、快楽の園は目の前にある、それどころか己は既に悦楽の園にドップリと浸っているはずなのに、禁断の木の実ははるかに遠いことを思い知らされる。

 快楽を切望し、性に、水に餓えている。すると、目の前の太平洋より巨大な悦楽の園という海の水が打ち寄せている。手を伸ばせば届く、足を一歩、踏み出せば波打ち際くらいには辿り着ける。

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2021/09/08

あの日から始まっていた (8 睡魔)

 鉛色なんだから仕方がない。気取ってるわけでも、屁理屈をぶってるわけでもない。
 あの日から始まっていた鉛色の日々は、あまりに深すぎて重苦しくて、自分でも分からずにいた。
 私はやたらと粘る曖昧の海に独り漂っていた。朝の目覚め…それが目覚めと呼べるなら…親の遠い呼び声で深く淀んだ泥水の底にいることを気付かせられた。

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