小説

2007/05/05

五月晴れの空へ

 彼は足元の枯葉を蹴った。長い信号だった。
 気がついたら、他の人は歩き出している。
 なのに、彼はためらっていた。
 
 やっぱり、ダメだ!
 
 彼は踵(きびす)を返して美紀のもとに向かった。枯葉が驚いたように舞った。
 
 あのままじゃ、ダメだ。絶対にダメなんだ。

 初めは早足だったのが、次第に足が速まっていく。
 幾度となく待ち合わせした公園の脇の近くのサツキの植え込みのある家の傍に差し掛かったとき、足が止まった。

 何日か前の美紀との他愛もない会話を思い出したのだ。

 これはサツキって言うの。

 えっ、これって、ツツジじゃん。
 どう見たって、ツツジだよ。

 ううん、ツツジはツツジだけど、違うの。ほら、葉っぱがちょっと小振りでしょ。

 云われて見ればそんな気もする。でも、彼にはどうでもいい。

 要するにツツジの仲間なんだろう!

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