あの日から始まっていた

2025/03/20

明けない夜に

Noroi(前略)そんな高尚な意味ではなく、古臭い言葉を使えば、もっとアヴァンギャルドな意味で消尽や蕩尽を受け止めていた。
 エロティシズムへの欲望は、死をも渇望するほどに、それとも絶望をこそ焦がれるほどに人間の度量を圧倒する凄まじさを持つ。快楽を追っているはずなのに、また、快楽の園は目の前にある、それどころか己は既に悦楽の園にドップリと浸っているはずなのに、禁断の木の実ははるかに遠いことを思い知らされる。

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2025/03/16

昼行燈126「眼差しという匕首」

 ← 湖畔に浮か広がる朝靄 (Wikipediaより)

[ 下記は、ル・クレジオ著『物質的恍惚』を読み出していて、ふと創作してみたくなったもの。創作…ただの想像かな。(03/13 13:34)]:

 

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2024/11/26

昼行燈125「夢の中で小旅行」

  「夢の中で小旅行

 夢から目覚めた。多分ドローンに乗ってた。いや、プロベラも何もなくて、ただのお立ち台だ。むしろ踏み台と呼ぶべきか。ただ、腰に届くかどうかという高さの背凭れらしき柵があって、移動して振り落とされそうなのを辛うじて、下半身で耐えていた。上半身は風圧に耐えているだけ。無論、青天井である。何の力で駆動してるのか、分からない。

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2024/11/18

昼行燈124「物質のすべては光」

90384  「物質のすべては光

 月の光が、胸の奥底をも照らし出す。体一杯に光のシャワーを浴びる。青く透明な光の洪水が地上世界を満たす。決して溺れることはない。光は溢れ返ることなどないのだ、瞳の奥の湖以外では。月の光は、世界の万物の姿形を露わにしたなら、あとは深く静かに時が流れるだけである。光と時との不思議な饗宴。

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2024/09/05

昼行燈118「夢魔との戯れ」

  「夢魔との戯れ

 夢魔擬きの妄想…寝入るまでの迷想:夜の底深い。深みの際に達したなら浮上あるのみか。そのはず。泥濘をノタノタと這っているうち気が付いたら、視界が開けてきて、息苦しささえいつしか忘れ去っている。浮かび上がるために踠いたりはしない。何をしたって無駄。悪足掻きはしないことだ。藻に絡まれクラゲにチクリとされ、イソギンチャクになぶられる。何故かマリンスノーまで深海から舞い上がってきやがる! 

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2024/09/04

昼行燈117「夏の終わりの雨」

Rain   「夏の終わりの雨

 

 俺は眠れないままに闇を見詰めていた。
 じっと眺めていると、見えないはずの闇の中にいろんなものが見えてくる。
 分厚いカーテンの向こうの何処か靄の掛かったような夏の終わりの夜の闇が、まるで船底の罅割れから水の洩れ入るように俺の部屋を満たしているようだった。

 内と外とを厳格に分けるために、高いカネを払っておんぼろなアパートには不似合いな遮光カーテンを下げたのに、まるで役目を果たしていない。

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2024/08/26

昼行燈115「ピエロなんだもの」

Pierot_20240826035301  「ピエロなんだもの

 夢が嗚咽のように噴出する。血と汗と涙のように、時も所も弁えず、ただ本能のように剥き出しに。
 ああ、しゃっくりのように止まらない発作。

 真っ直ぐすぎて、魂をも射抜いてしまう衝動。
 目の前にぶら下がっている命。干し柿の真似をしているのか。それとも、いつの日かミイラになることを夢見ている?

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2024/08/12

昼行燈112「サナギ」

Purteus  「サナギ


 剥き出しなんだよ。裸じゃないか。皮膚さえ剥がれて。
 まっさらのこころ。まっさらすぎて、この世では淡雪の如く、生まれた瞬間から手足の先が融けていく。

 顔が蒸気のように大気に呑み込まれていく。
 自分でも嗤っている。可笑し過ぎて涙もでない。

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2024/08/09

昼行燈111「長崎幻想」

Higann  「長崎幻想

 浮腫する肉体。血肉の蒸発する風船玉。まるで癇癪玉だ。ああ、涙が出るほど滑稽な光景だ。ゴロゴロ転がっている。
 衣服さえも天に召し上げられたのだ、髪など熱風と共に蒸発するのは当然じゃないか。髪は天へと揮発し、あるいは肉の底へと巻き込まれ縮こまっていった。天が地上世界をのし歩き睥睨して回る時、髪の毛など屁にもならぬ。

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2024/08/07

昼行燈110「長崎の黒い雨」

The_blue_grenade 「長崎の黒い雨

 長崎の地に降った黒い雨に俺は祟られている。あの、紫よりも周波数の 高い、怒る光のシャワー。肉が蒸発し、血が噴き、肺腑が踊り、羊水が煮え滾った。胎児は生煮えとなり、妊婦は遮光土器の模様と化した。鉄骨が蕩け、瓦が泡立ち、石が煤となり、コンクリートが灰燼に帰した。

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