創作(断片)

2023/12/04

昼行燈44「止まっちゃいけない」

Jinzhashi  「止まっちゃいけない

 ある秋口の早朝だった。いつもなら起こされるはずが、なぜか目覚めてしまった。それとも眠れない夜を明かしただけだったのか。
 行かなくちゃいけない。何処へ?
 逢わなくちゃいけない。誰に?
 晴れ渡った秋空だった。行先は分からない。足に任せるしかない。気の向くままってことじゃない。行方は決まっているのだ。

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2023/11/28

昼行燈42「無間 」

Gaito無間

 夢の中にいるはずだった。なぜなら宇宙空間をゆらゆら漂っているのだから。ん? ゆらゆら? そんな呑気で居ていいのか?

 何処までも落ちていく…それとも際限もない上昇なのか。右も左も、上も下もない。グルグル回っている。メニエル病の日々の再現。あれ以上の猛烈な遠心力が脳味噌の神経細胞の一つ一つを引き裂いている。グリア細胞までが星屑にならんとしている。凍てつくという表現が可笑しいほどに懐かしい。

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2023/11/27

昼行燈41「 ダストシュート」

Husen  「ダストシュート


 奴は蛇の目をしていた。間違いなく、奴は爬虫類だ。冷血動物だ。いや、動物に熱い血が流れるというイメージがあるなら、興味ある対象に向かっていくのが動物というのなら、そもそも、外界に興味あるものがあるというのなら、奴は、動物ですらない。
 といって、奴が植物というわけでもない。

 奴は、大地とは何のつながりもない。根無し草ですらないのだ。

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2023/11/23

昼行燈40「縫合」

Rengoku   「縫合

 眠れない夜を潜り抜けた。眠気はある。睡魔は襲ってくる。矢継ぎ早に繰り出す焔の切っ先。
 炙り出されて部屋を飛び出した。胸がむかむかする。乾麺が胃の腑で縺れてる。
 逢わなきゃならない。切迫する思いが滾る胆汁で味付けされていた。

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2023/11/22

昼行燈39「 廃墟」

City_20231123034601  「廃墟

 

 寝苦しい夜だった。長い長い夜の果ての、遠い幽冥の境にいた。まるで、中東の戦闘の地を潜り抜けてきたような気分だった。
 しかも、オレは、加害者だ。空襲する側に立っている。絶対、安全な場所にいて、ボタン一つを軽く押すだけ。
 すると、目の前の液晶モニターに、綺麗な軌跡が緩やかな曲線を描いていき、ターゲットに当たると、一瞬、青白い閃光が煌くと、すぐに真っ暗闇の画面に戻る。
 それだけのことだ。ここにいるオレは、鼓動が早まることもない。

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2023/11/20

昼行燈38「軽石」

Karuisi   「軽石

 行く当てなどなかった。あてどなくふらついていた。何かを探し求めていたと思いたかった。真っ昼間の空は空白の原稿用紙のようだった。今どき原稿用紙なんて言葉が出てくるなんて。
 何かを拾い集めたかった。やたらとそんな衝動が沸き立っていた。だからってなんで河原なんかに来たんだろう。河原で石ころでも拾う?
 遠い昔、石けりやら石で水切りなんて他愛のない遊びに興じていたことが思い出される。
 今はただ拾いたい。石の手応えを手の平に感じたかったのだろうか。

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2023/11/19

昼行燈37「ドリッピング」

Number-32ドリッピング

 

 どんな表現の営為も、その表現の衝動の基盤には、自らでさえ探りえない暗くて深い、分析も、まして全体的俯瞰など論外であるような、広大なる沃野とも荒野とも判断の付きかねる世界があることを誰しも、気づかざるを得なかった。
 遠い昔、私とは一個の他人だと、誰かが喝破したのだった。
 が、20世紀になって、一個の他人であろうと何だろうと、あらゆる輪郭付けの試みの一切を呆気なく放棄せざるをえないほどに、<私>は見えなくなっている。誰かが言ったように、私とは、せいぜいのところ雲なのだ。

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2023/11/16

昼行燈36「糸が切れた」

Zaisu  「糸が切れた

 

 何だか妙に浮かれた気分だった。目覚めたときからふわふわしていた。きっと愉快な夢でも見てたんだろう。惜しいことに何も覚えていない。とにかく前向きというかふっきれたというのか、ケセラセラというのか觔斗雲(きんとうん)にでも乗っかってるようだ。


 そういえば、一時期、繰り返し見る夢があった。それはボックス型の椅子にどっかり腰掛けたまま、何処までも町中を駆け抜けていく夢だった。高座椅子とでも呼ぶのか、肘掛のあるがっちりした、まるで箱にすっぽり埋まってしまうような椅子だった。

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2023/11/06

昼行燈30「瑠璃色の光」

Ruri 昼行燈30「瑠璃色の光」

 窓は締め切っている。なのに、風が唸るように鳴っている。
 窓外の葉っぱの散り果てんとしている木々が悲鳴をあげてるのか。木立の間を駆け抜ける風が快哉をあげてるのか。
 木々や荒れ地の草を行方を阻む邪魔者とばかりに薙ぎ倒さんとしているのか。舞い上がる枯れ葉は衣擦れの音符となって踊り狂っている。

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2023/11/02

昼行燈28「謎の女」

G6謎の女

 不思議だ。
 同じ女なのだろうか。俺の行く先々で現れる。それも行った先々で違う装いで。

 それは夢のようであり、現実以外の何者でもない。
 ついには夢の中にまで現れるようになった。

 まさか俺の影? 俺の望み? 救いですらある?

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