タールの彼方
創作だろうか声にならない呟きだろうか:
まだるっこしい。粘りつく何か。纏わりつく細い腕。波の音が体をなぶる。潮の香が鼻腔を貫く。真っ赤な闇が瞼を焦がす。中空に漂っている。白い脚が波打つ髪のように絡み付いている。あっさりと溺れてしまいたい。半端に慰撫するんじゃない。蜜の味の舌が体を這う。歯噛みするそれ。ああ、私は何処にいる? お前は誰? 際限のない愛撫が回転する螺旋階段に抉られている。目覚めはまだか。出口はないのか。
創作だろうか声にならない呟きだろうか:
まだるっこしい。粘りつく何か。纏わりつく細い腕。波の音が体をなぶる。潮の香が鼻腔を貫く。真っ赤な闇が瞼を焦がす。中空に漂っている。白い脚が波打つ髪のように絡み付いている。あっさりと溺れてしまいたい。半端に慰撫するんじゃない。蜜の味の舌が体を這う。歯噛みするそれ。ああ、私は何処にいる? お前は誰? 際限のない愛撫が回転する螺旋階段に抉られている。目覚めはまだか。出口はないのか。
「ボクの世界は真っ赤な闇」
暗闇の何処かから声が聞こえる。声の主は目の前にいる。きっと先生だ。「10から1まで逆に言いなさい」とか何とか。生徒らは順番にハキハキと、中にはつっかえながらも、何とか答えている。やがてボクにも番がやってくる。ボクにできるだろうか。隣の女の子は、なんて綺麗な声なんだろう。「じゅう きゅう はち なな……さん にぃ いち。」ボクだ。みんなの目線がボクに集まる。何十もの目玉がボクの顔にへばり付く。視線というハリネズミの針がボクの心を突き刺す。椅子を引いて立ち上がるボク。「じゅう…きゅう……はち……」そこで止まってしまう。「なな」が言えない。
手探りして歩いている。何処を歩いているのかさっぱり分からない。何故に歩くのか。それは走るのが怖いからだ。早くこの場を抜け出したいのだが、漆黒の闇が辺りを覆っている。ぬめるような感覚がある。巨大なナメクジに呑みこまれているようだ。
息はできている。空気はあるのだろう。吸う。溜める。吐く。意識して呼吸する。体の中に何かを取り込んでいる。肺胞がギリギリの活動をしてくれている。
マスクをするということ。恐らく我輩には大方の方とは違う意味を持つだろう。生まれもっての障害と度重なる手術でやや歪な鼻や口。マスクで覆ってしまえばどんなに楽になることか。歪な部分を隠してしまいたい。そう願わずにいられようか……願わなかった日があっただろうか。 マスクをして口許を隠す。まともであるかのような幻想が現出する。他人の好奇の目、哀れむ目を気にせずに町中を闊歩できる。何処かの初めての店や場所を死を覚悟するほどの蛮勇を鼓舞してやっと訪れる……なんてことがなくなるのだろうから。
何十年にも渡る不毛な闘い。水面下の足掻き。目覚めた瞬間からの覚醒を求めてのスローな、ギザギザの連続モーション。今朝も眠りのない夜が明けた。夜とは眠りを焦がれるシジフォスの咆哮。吠える声が爛れきった悲鳴だとは誰一人気付きはしない。おのれでさえ分かって来なかったのだもの、誰に分かるはずがあろう。愚か者よ それはお前のことだ。何年も何十年もこんなにあからさまな侮蔑を見過ごせたなんて、愚かどころか、無様だ、滑稽だ、哭きたいほどバカバカしい茶番劇だ。
いつしか迷い込んでしまっていた。そうとしか言えない。分からないままにここにいる。ここが何処かも言えない。
分かったようにここって言ってるじゃないかって。そもそもそう言っているお前は何なんだ?
結構、はっきり分からないって断言してる。分からないと言い切るにはそれなりの何か確かなものがあるからだろう?
まさか、我思う、ゆえに我ありじゃないけど、分からないなりに我はここにいるって、主張し始めるんじゃなかろうな?
春の陽気が濃厚に漂う。晴れ渡った空が広がって憂いほどだ。ここにいる何か。世界を眺めている。が、世界は頓着しない。喚いても泣き叫んでも知らん顔。このまま消え去っても気付きもしない。この無関心はやさしさなのかもしれない。
ある種の記号が明滅している。電池は消耗して最後の力を振り絞っている。光を浮かべない瞳。記憶を留めない心。世界の片隅で腐った板壁に拾った枝の先で何かを描こうとしている。形に意味があるのか。形を成さないと描いた途端、苔に呑みこまれるとでも云うのか。
足音だけが聞こえる。いや、足音さえ聞こえちゃいない。舗装された道を歩いている感触があるだけだ。…あるような気がする。そう思いたいのだ。大地を踏みしめているといえたら、どんなに感激だろう。だが、何処か夢見心地なままだ。実感があると言えば、胃袋のざわめき。喉のイガイガ。口中の渇き。ショボショボする目。腰の疼き。膝の痺れ。耳が遠くなったのだろうか、通り過ぎた二人の会話の声が風に紛れてしまっていた。口パクでもしてたんだろうか。
昨日未明の夢に、かの松下奈緒さん(ともう一人有名な女優さん)が出てきてくれた。昨日、録画で観た松下奈緒さんらが出演の再放送ドラマの余韻だろうか。これからも、色んな女優さんたちが夢に出演してほしい。夢、こうでなくっちゃ!
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