タクシーエッセイ・レポート

2009/12/16

クリスマス小風景

 クリスマスの飾り付けで色めく街中を人々が忙しげに、あるいは賑やかに歩きすぎていく。冷たい空気の中だけれど、そうした人たちには熱気が漂っているようで、寒ささえ、心の温みへの郷愁を誘う小道具のようだ。

 が、そうした活気に満ちた町の片隅を、時折、どこか寂しげな影が過ぎていくこともある。
 車の中で信号待ちをしていると、闊歩する連中より、何故かそうした影に小生は注意が向いてしまう。きっと、自分もそうした仲間だと感じているからだろう。

 そう、今年も小生は一人っきりのクリスマスを迎える。バレンタインデーも誕生日も、そうだったように。
 小生はもう、既にいい年齢を迎えている。今更、そんな賑やかなざわめきが自分を取り巻いてくれなくても、別段、寂しいとは思わない。
 でも、そのポツン、ポツンと見える影は、どこまでも寂しそうに見えてならないのだ。あの子達が、体を常に街灯やショーウインドーに背を向けるように努めているのが、痛いほど分かる。
 顔の表情を曝したくないのだ。

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2009/12/13

我がタクシードライバー時代の事件簿(番外編:夜間飛行)

夜間飛行を堪能する

 真夜中の高速道路を一路、都心を目指してタクシーを巡航させる。ほんの一瞬だけれど、ふと、「夜間飛行」という言葉が脳裏を過(よぎ)ることがある。
 この言葉、そして感覚が不意に浮上してくるのは、あくまで帰路である。往路では、まずそんな経験はない。
(中略)
往路は、上記したように、行灯が消えているので、タクシーも普通車も区別がない。少なからぬ車が黒っぽい塊と化して下りの道をひた走っているだけである。
 
 それが、夜半過ぎの帰路となると、様子は一変する。

 そう、一般の車は数えるほどだし、トラックも少ない。時に、高速道路上を走っているのは岐路を急ぐタクシーだけだったりする。そして、そのタクシーのバラけた群れは、それぞれの車の上の行灯に灯りが灯っている。

 夜半を回った高速道路を都心を目指してひた走る。すると、夜の闇の中を朧に光る黒に近い灰色の幅広い帯がまっすぐに走っている。帯には路肩や車線を示す白いラインが描かれている。防音壁がまた夜の川を土手のように闇にどこまでも続いていく。

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2008/10/03

葉桜の散り残っての落ち零れ

 桜の季節が終わり、葉っぱだけとなって緑豊かな街路樹や公園を縁取る木々としてわれわれの目を和ませてくれていた葉桜も、その葉っぱが、16日木曜日から金曜日の朝にかけての木枯らしに、すっかり吹き飛ばされ、いよいよ裸木となってしまっている。

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 が、よくみると、木の立つ位置も関係するのだろうが、葉っぱの落ち残っている木もある。

 そのほとんど裸木同然の枝などに散り残っている葉っぱというのは、散らないで頑張っていると見なすべきなのか、それとも、未練がましくしつこく枝や梢に付き纏ったまま離れないとみなすべきなのか、つまりは、本来ならあの木枯らしに、そう、満開となった桜の花びらたちが時が来ると呆気なく、そして潔く散っていくように、ちょうどそのように散ってしまうべきなのであり、ああ、それなのに残っているというのは、見苦しい、下手すると見苦しい以上に滑稽ですらある…のか、そんな感覚がふと小生の脳裏に過(よぎ)ったのである。

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2008/09/26

木枯しも終わりよければ全てよし

 師走である。年末なのだ。
 午前の天気予報では夜にも降るはずと。
 でも、とうとう、傘を差す必要も感じないような細かな雨滴がちょっと降っただけ。

 寒い。曇天。イルミネーションもなんとなく寂しげ。
 無論、月影はない。

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 タクシーの営業は、週末である金曜日は大抵、他の曜日より忙しいと相場が決まっている。なので、タクシードライバーも、可能な限りは所定の営業予定日を変更してでも金曜日に振り替え、営業に出ようとする。
 小生は変更するのが面倒なので、会社で決められた日程どおりに出社し営業。
  
 昨日は営業の日になっていた。日中はまあまあ金曜日らしいかなという程度。夜も、確かに忘年会の会場などへ向うお客さんが増えている。駅へ、あるいは駅から店へ。
 凄みを増してきたのは、やはり夜も夜半に近づいてから。
 小生は、忙しさを予見して、郊外へと逃げようとしていた。できるだけ人のいないところへ。小生、人が多いところは苦手なので、普段もあまりお客さんのいないところを走っている?!

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