ディープ・スペース

2024/09/05

昼行燈118「夢魔との戯れ」

  「夢魔との戯れ

 夢魔擬きの妄想…寝入るまでの迷想:夜の底深い。深みの際に達したなら浮上あるのみか。そのはず。泥濘をノタノタと這っているうち気が付いたら、視界が開けてきて、息苦しささえいつしか忘れ去っている。浮かび上がるために踠いたりはしない。何をしたって無駄。悪足掻きはしないことだ。藻に絡まれクラゲにチクリとされ、イソギンチャクになぶられる。何故かマリンスノーまで深海から舞い上がってきやがる! 

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2024/08/26

昼行燈115「ピエロなんだもの」

Pierot_20240826035301  「ピエロなんだもの

 夢が嗚咽のように噴出する。血と汗と涙のように、時も所も弁えず、ただ本能のように剥き出しに。
 ああ、しゃっくりのように止まらない発作。

 真っ直ぐすぎて、魂をも射抜いてしまう衝動。
 目の前にぶら下がっている命。干し柿の真似をしているのか。それとも、いつの日かミイラになることを夢見ている?

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2024/08/09

昼行燈111「長崎幻想」

Higann  「長崎幻想

 浮腫する肉体。血肉の蒸発する風船玉。まるで癇癪玉だ。ああ、涙が出るほど滑稽な光景だ。ゴロゴロ転がっている。
 衣服さえも天に召し上げられたのだ、髪など熱風と共に蒸発するのは当然じゃないか。髪は天へと揮発し、あるいは肉の底へと巻き込まれ縮こまっていった。天が地上世界をのし歩き睥睨して回る時、髪の毛など屁にもならぬ。

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2024/08/06

昼行燈109「日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル」

Vols_20240806024601

日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル

 

突如 空襲 一瞬ニシテ 全市街崩壊 便所ニ居テ頭上ニサクレツスル音アリテ 頭ヲ打ツ 次ノ瞬間暗黒騒音

 その時を境に私は変わった。昨日の私は消滅し新しい私は居場所を天に変えた。

薄明リノ中ニ見レバ既ニ家ハ壊レ 品物ハ飛散ル 異臭鼻ヲツキ眼ノホトリヨリ出血 恭子ノ姿ヲ認ム マルハダカナレバ服ヲ探ス 上着ハアレドズボンナシ

 私は全てを見ようと決心した。私とは非在の焔。それとも存在の無。

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2024/07/30

昼行燈107「強迫観念」

Chousinka  「強迫観念

 夢の中にいるに違いない。得体の知れない生き物たちが犇めき蠢いている。命たちがもんどりうっている。命の怒涛が俺に圧し掛かってくる。
 草むしりに日々齷齪してる俺への復讐なのか。日々、際限のない数の生き物たちを踏みつけ掻き削り引き千切っている。俺はただ普通に生きているだけなのに。ただ目障りな雑草を毟り取り、観ただけで、いやその存在の気配を感じ取るだけでぞわぞわさせる微細な虫けらどもを殺虫剤で抹殺を図っているだけなのに。

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2024/07/24

昼行燈104「赤茶けた障子紙」

Yakata_20240724024701  「赤茶けた障子紙

 

 肉体的異常があったからといって、ひたすら精神的に打ちのめされ、打ちひしがれ、圧倒され、精神的な闘争に疲労困憊し、困窮し、心が枯渇し、それこそ、草木の一本も生えない荒涼たる、寒々とした光景ばかりがあからさまとなるケースもある。

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2024/07/22

昼行燈102「黴と錆」

Vols_20240723025601   「黴と錆

 

 雨が降っている。
 雨の音がまともに部屋になだれ込む。

 一人きりの部屋。だから、尚のこと、雨音が喧しく聞こえるのかもしれない。

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2024/07/19

昼行燈101「単細胞の海」

Kikuji   「単細胞の海へ

 夢の中に居るに違いない!
 願望なのか悲鳴なのか分からない、声にならない声が喉元に蟠っていた。溜まって腫れあがった浮腫が破裂しそう。膿なのか叫びか喚きの渦が噴出する裂け目を見出せずにいる。

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2024/07/10

昼行燈97「私はゴムに 私はコンクリートに」

Yukei   「私はゴムに 私はコンクリートに

 さて、肝心の全身麻酔をされての体験のこと。

 ゼンマをされるのは初めてじゃないのに、麻酔が効いてくる感じがまるで予想と反していた。
 予想といっても、子供の頃の麻酔体験しかないから、その時の状態とは麻酔の効き方が違う! と感じていたのである。

 徐々に意識が遠退いていくとか、そんな感じではなかった。

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2024/05/06

昼行燈83「夢は眼下に」

Umi3  「夢は眼下に

 海を眺めていた。限りなく透明で懐かし気で自分を何処までも蕩かせてくれそうな海。大好きな青。青というよりアズールの青だ。ラピスラズリの青

 もっと好きなのは紺碧の青。海外の人にはアズールの青と何処が違うだろうが、俺には全く違う。紺碧には、濃い青色の『紺色』と強い青緑色の『碧色』とが混ざっているのだ。紫を帯びた濃い青色、黒みを帯びた紺色、藍がかった濃い青色…藍染の色とも云えなくもない? 俺にはどう表現すればいいのか分からない。

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