小説(幻想モノ)
2023/09/19
2023/09/14
昼行燈
まっさらな空間。何もない? 茫漠たる気分。浮いてる? 漂ってる? 何処に? 掴みどころのない時空。何もないというのは本当? なのに体は火照っている。火照るどころじゃない、燃えるようだ。鉛のように凝り固まっているのに、熱いのは何故だ? 削れば金属の粉がボロボロ零れるに違いない。
2022/10/09
2021/09/16
あの日から始まっていた (11 赤いシーラカンス)
「赤いシーラカンス」
不思議の海を泳いでいた。粘るような、後ろ髪を引かれるような海中にもう馴染み切っていた。
髪を掴まれて、何処へでも流れていったって構わないはずだ。
なのに、妙な意地っ張りな心が前へ、前へ進もうとする。
2021/09/08
あの日から始まっていた (8 睡魔)
鉛色なんだから仕方がない。気取ってるわけでも、屁理屈をぶってるわけでもない。
あの日から始まっていた鉛色の日々は、あまりに深すぎて重苦しくて、自分でも分からずにいた。
私はやたらと粘る曖昧の海に独り漂っていた。朝の目覚め…それが目覚めと呼べるなら…親の遠い呼び声で深く淀んだ泥水の底にいることを気付かせられた。
あの日から始まっていた (7 雪の朝の冒険)
それが、もし、そもそも、その手を差し出す前提としての、心の身体が欠如していたとしたら。差し出そうとすると、その力が反作用として働き、自らの身体(心)を砂地獄に埋め沈めていく。砂の海に溺れることを恐怖して、ただ悲鳴の代わりに手を足を悪足掻きさせてみたところが、その足掻きがまた、我が身をさらに深い砂の海の底深くへ引っ張り込まさせる結果になる。
2021/08/17
2021/08/16
あの日から始まっていた(1)
あの日に始まっていたことを自分でも気付かずにいた。朝、あれが朝と呼べるなら、目覚めの時のはずだから朝なのだろう。
入院生活から戻った私はすっかり変わっていた。変わっていたことを姉の親たちへの訴えで知った。術後の私はひどい鼾を掻くようになっていた。当人の私は未だ異変に気付いていない。あまりにひどい鼾で眠れない、一緒の部屋では到底我慢できない。十歳だった私は一人で寝ることになった。親にやんわり諭された。軽い驚きがあっただけだった。淋しくはなかった。一人で部屋を占有することのほうが嬉しかった。鼾の声…音は私には聞こえない。どれほどひどいものかも分からない。
2020/10/15
赤い闇
手探りして歩いている。何処を歩いているのかさっぱり分からない。何故に歩くのか。それは走るのが怖いからだ。早くこの場を抜け出したいのだが、漆黒の闇が辺りを覆っている。ぬめるような感覚がある。巨大なナメクジに呑みこまれているようだ。
息はできている。空気はあるのだろう。吸う。溜める。吐く。意識して呼吸する。体の中に何かを取り込んでいる。肺胞がギリギリの活動をしてくれている。
2020/03/05
俺の口は鍾乳洞
夜、決まって観る夢がある。口の中に石膏のような味気のない白い塊が詰まる。吐き出したいけど、粘着いて、指で掻き出そうとしても剥がれない。ドアの向こうから足音がする。近所の人か、通り過ぎるだけなのか、それとも、俺に用なのか。足音が段々近づいてくる。まずい、ドアの前で足音が止まったぞ。
口の中を懸命に穿り返している。粘膜が少々傷ついたって構わない。とにかく抉り出さないと、俺の秘密が知られてしまう。誰にも知られたくない、こんな無様な姿を見られたくない。流しに立って、水道の蛇口を直接口に含んで、石膏を融かそうとした。
何だってこんなものが喉の奥から出てくるんだ。鍾乳洞じゃないんだぞ、俺の喉は。
より以前の記事一覧
- 呆然自失の朝が今日も 2020.03.04
- 赤い闇 2018.08.28
- シラミの部屋 2015.04.10
- 黄色いライン 2013.12.31
- 闇に降る雨 2013.08.08
- 黒い雨の降る夜 2013.08.08
- 間に合わない 2012.01.22
- 白い影 2012.01.16
- オレは蛇 2011.09.22
- 蒼白の刃 2011.05.06
- 冬の蝶 2010.11.22
- 花の宴 2010.04.14
- 青い洗面器 2010.03.02
- うおつりぼし 2010.02.28
- 夢、それとも記…憶の世界 2010.01.31
- 記憶の欠片 2010.01.17
- ディープブルー 2009.09.23
- 梅雨空に寄せて 2009.07.18
- 黄色いチューリップ(断片) 2009.03.14
- 金色の庵 2009.03.12
- 蛇の森(断片) 2009.02.17
- 初夢 2009.01.04
- 粉塵の夢 2008.12.21
- ボナンザ 2008.12.13
- 青い雫 2008.11.21
- メモランダム(その1) 2007.12.19
- 自明性の喪失 2007.10.30
- 釣銭 2007.09.03
- 月影に寄せて 2007.07.22
- 仮面の舞踏 2007.06.15
- ジャスミンの愛 2007.05.30
- 窓の隙間から 2007.05.03
- トーストとミルクとホセと 2007.04.22
- 路上に踏み潰された蛙を見よ 2007.04.17
- 姫始め 2007.03.12
- あれは夢ではなかった 2007.02.05
- 水たまり 2006.07.09
- 闇夜に躑躅の花の咲く 2006.04.15
- 電車の男 2005.11.27
- 日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル 2005.08.09
- 紫苑の丘へ(断片) 2005.04.30
- 春の雨は(2) 2005.04.23
- 春の雨は(1) 2005.04.19
- 春宵花影… 2005.04.10
- 冬の薔薇 2005.01.14
- テラコッタの夢 2004.12.13
- 真冬の明け初めの小さな旅 2004.12.01
- 透明人間 2004.11.22
その他のカテゴリー
Mystery Circle あの日から始まっていた コント ジェネシス タクシーエッセイ・レポート タクシー吟行 ディープ・スペース トンデモ学説 ドキュメント ナンセンス ナンセンス小説 ペット 俳句・川柳 創作(断片) 創作:紀行 創作:落語篇 夢談義・夢の話など 妄想的エッセイ 宗教・哲学 小説 小説(オレもの) 小説(タクシーもの) 小説(ボクもの) 小説(ボケもの) 小説(幻想モノ) 心と体 思い出話 恋愛 文化・芸術 旅行・地域 日記・コラム・つぶやき 旧稿を温めます 書籍・雑誌 未定 浅草サンバレポート・日記 祈りのエッセイ 詩作・作詞 趣味 酔 漢 賦 音楽 駄文・駄洒落・雑記 黒猫ネロもの
最近のコメント