小説(ボケもの)
2024/09/20
2024/04/09
昼行燈82「猫、春の憂鬱を歩く」
春である。近所の犬コロどもも盛りの血が騒ぐ春である。我輩の可愛いお鼻もあちこちから春風に乗って漂ってくる匂いにヒクヒクしている。でも、臭いに関しては、犬コロどもには、ちょいと敵わない。
まあ、それだけが奴等の取り柄なんじゃから、自慢気に大地をクンクンさせておけばよいのだよ。
その代わり、我々猫族は、なんたって耳がいい。犬コロどもだって、人間には比べものにならないほどに音に敏感だ。そう、ドアの閉まった家の中にいたって、表から響いてくる足音で、ご主人様の草臥れかけたドタッドタッという足音、近くのガキどもの元気闊達なタンタンという足音を聞き分けているよね。
2012/01/18
みんな満点
コホン、コホン。
この前は醜態を晒して恐縮しておる。
名誉挽回というわけではないが、本日はやや荘重な内容の話になるから、そのつもりで承るように。この前も言ったが、年寄りの話を聞くのは若者の功徳だぞ。功徳じゃなくて、くどいぞ、などと文句を言わないようにの。
さてじゃ、わしが今日、話そうと思うのは、みんなが一等賞にちなむ問題じゃ。せっかくこの世の日の目を見そうな哀れな精子に愛の手を! と述べて、つい我が身のことに思いが及んで、締め事というか秘め事というか姫事に望んで、ちっとは発射できるか、心配だったこともあって、つい、何だか繰り言になるなんて、のお、力が入ってしまったんじゃ。
でじゃ、みんな一等賞という発想法の愚かしさは、皆も分かっておるじゃろう。今更、わしがくどくど説明するまでもないじゃろうて。
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2011/06/11
涙の夜
今日は土曜日。
俺たちは、週末はあいつの部屋で過ごすことにしている。
ドアを開けて覗かせたあいつの顔を見て驚いた。
涙!
「お前、どうしたんだよ、涙なんて流して」
そう、問い掛けながら、何かまた、やったかなと頭の中がグルグルしている。
「ううん、なんでもない」
挨拶代わりのキスも許してくれない。
あいつは黙って俯いたまま、俺を置き去りにして奥のほうへ。
俺はためらいを感じたけれど、居間に向かった。
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2010/03/02
青い洗面器
ぬるぬるべたべたする。
不快なはずなのに、なぜか気持ちいい。
体が死海に浮かんでいる。
決して沈まない。
潮の海に身を任せている。
すべてはあなたのもの。
わたしには何もできない。
できなかったし。
潮が満ちてくる。
閉じた空間…!
天蓋が迫ってくる。
わたしの体が赤い潮に迫り上げられて、今にも押し潰されそうだ。
息ができない。
今まで息ができていたのだろうか。
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2009/10/18
母と息子の「カラス なぜなくの」談義
「からす なぜなくの」
「それはね、からすは山に かわいい七つの 子があるからよ♪」
「ふーん。ところでさ、山にいるのは七羽のカラスの子供なの、それとも七歳の子供なの?」
「それはね、からすの子供が待っているんじゃないの」
「えっ、じゃ、からすは、人間の子供が可愛いからって、カアカア鳴いているの?」
「バカだね、この子は。カラスの子供が七歳じゃ、とっくにお爺さんかお婆さんでしょ。とてもじゃないけど、丸い目をした いい子だよ♪ なんて、唄えるはずなわよね」
「分かんなくなってきた。からすが鳴いているんでしょ。巣に子供が居るからって、待っているからって。巣に居るのが人間の子なら、飛んでいるのは、からすじゃなくて、人間ってこと?」
「ばかだね、お前は。つくづく、我が子だね。人間が空を飛べるはずないでしょ」
「あーあ、ますます分かんないや。巣に人間の子供が待っているってことは、何? からすって、人間の子供を捕まえて巣に閉じ込めているの。その子供を早く食べたい、腹減った、と鳴きながら飛んで帰っているってわけ?」
「何て子だろうね、お前は。できることなら、お前の脳味噌と、カラスのと入れ替えてもらいたいもんだね」
「大体さ…。あれ、飛んでいるのがからすだったらさ、どうして、巣に子供を残しているんだろうね」
「それはね、親は餌を探し求めて、まだ幼い我が子を巣に残して働いているんだよ」
「ふーん、だから、母ちゃん、いつもいないんだね。父ちゃんは、でも、いつも家に居るよ。父ちゃんは、働かなくていいの。いつも、部屋でグータラしているよ?」
「いいの、父さんはね、夜、しっかり、働いてもらってるから」
「?????」
(「カラスのことあれこれ」より)
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2009/01/03
2007/08/30
ウラ版・浅草レポート「敗軍の将、兵を語らず」
オモテ版レポートは既にアップ済み:
「私的第27回浅草サンバカーニバル」
以下は、表には書けなかった手記風なレポート。
題して「敗軍の将、兵を語らず」 !
サブタイトルは、「ウラ版・浅草レポート」
← 以下、アレゴリア置き場である浅草寺の駐車場で撮影。パレード直前の各チームの作業状況画像が続く。撮影は小生。
何ゆえ、「敗軍の将、兵を語らず」なのかは、一読すれば分かる。
本来ならドキュメントに仕立てるつもりだった。なので、事実乃至は真率な心情のみで綴っていくつもりでいた。
でも、結果として、多少なのか相当なのか分からないが事実と虚構と願望と妄想とが入り混じってしまった(書き手は分かっているはず…だが、書いているうちに脳味噌が興奮状態になったこともあり、話が膨らんできて、収拾が付かなくなった)。
ま、真実というものは、そしてこうした心情溢れる文というものは、虚実皮膜(きょじつひまく乃至きょじつひにく)の微妙な按配と韜晦とにあってこそ滲み出すもの生きるものだという小生なりの信念で、通常のレポートでは書けない領域まで踏み込んで描けるのでは、という野心というか目論見というか算段というか切ない希望で以て書いてみた。
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2004/11/22
赤い糸
卒業式も終わっていた。
中学校でなすべき儀式の類いも含め、何もかもが終わっていた。体育館から教室に戻り、あとは、先生
との最後の挨拶をして、みんな、お別れをする。
みんな、先生が来るのを待っていた。校庭には、父母達の姿も見られる。
でも、肝腎なことが終わっていない子達もいるのだ。
「慶のこと、好きなんだよ」そう、祐介が囁いている。
中学校の卒業式の日のことだ。
もう、クラスのみんなはそれぞれに進路が決まっている。進学校に進む者、専門学校に進む者、家業を手伝う者、一人だけ浪人を決めた奴もいる。
胸に抱える思いも、それぞれだった。呑気に漫画の本を読んでいる奴もいれば、高校での生活を語り合っている連中もいる。
でも、中には切羽詰った表情が誰の目にも分かる奴もいたりする。
祐介は、慶子が他の男の子が好きなのを知っている。でも、そんなことを気にする祐介じゃない。現に目の前で慶子が武志に真っ赤なハートマークで封印された手紙をみんなの前で、堂々と手渡していた。みんな、そのあっけらかんぶりに、囃し立てるのも忘れていたくらいだ。今日は卒業式、無礼講の日なのだ。みんな、自分の切羽詰った思いを果たすことに懸命だったのだ。
祐介は、そんな慶子の振る舞いなどに頓着せずに言い寄っているのだった。
慶子はT高校という進学校に進む。成績も抜群で、自分に相応しいのは、武志しかいないと思っていた。
一方、祐介は、家業を継ぐ…というのは、口実で、実際のところは勉強するのが嫌で嫌でたまらず、とっくに進学など放棄していたのだった。それより、今、やりたいことが大事。今は、目の前の女の子を追っ駆けることが全てなのだった。
祐介は、思い込んだら、頭の中がそれだけで一杯になる性分だった。この前は、あの子、その前は、違うクラスの女の子、違う学校の女の子を追いかけて、その学校の生徒と喧嘩したという噂もあった。
慶子は、祐介には関心がなかった。格好はいいけど、興味も違うし、住む世界が違うような気がしていた。はっきり言って、今ごろ、みんなの前で言い寄られるのは、邪魔なのだった。
その上、祐介は、慶子に向かって、「慶」なんて、呼び捨てにする。祐介の癖なのだ。気に入った女の子がいると、もう、その子は自分のもののように思えてしまって、慶子さんとも呼ばないし、苗字を呼ぶこともない。オレだけの慶、というわけだった。
その厚かましさがまた、慶子には、うんざりなのだった。ただ、育ちのいい慶子には、邪険に祐介を振ることが出来ないでいる。祐介は乱暴者だと分かっているので、不快そうな表情を見せつけるのが精一杯だった。
彼女は視線を好きな男の子に向けたかったが、生憎、クラスが違うので、せいぜい窓から外を眺めたり、先生が早く来ないかと、ドアの辺りを眺めやったりしていた。
そんな二人を教室の後ろでジッと眺めている女の子がいた。奈津美だった。中学三年になりたての頃、祐介が夢中になった女の子で、一学期の終わり頃までは、二人の仲良しぶりは、みんなの注目の的になっていた。
奈津美は、祐介が好きだった。祐介にモーションを懸けられて、嬉しかった。むしろ、熱い視線を送って、祐介を誘い込んだのは、奈津美のほうだった。
ただ、予想外だったのは、祐介の浮気振りが想像以上のものだったことだ。自分なら祐介を手中にできる。決して逃さないで、ずっと付き合っていける。そのはずだった……のに、夏が来る前に、あっさり振られた。振られたとは思えないくらい、呆気ない終わりだった。
祐介にしたら、振ったとさえ思っていない。数ある女の子の一人に過ぎず、もともと祐介は、自分に近づいて来る女の子は、反って、退屈してしまう性分なのである。
奈津美は、祐介のことが諦められなかった。いつかは自分のほうに戻ってくる。だって、あの日、「ナッツのこと、好きだよ」って、言ったのだから。好きだと言ったことより、自分のことを「ナッツ」だなんて、愛称で読んでくれた、その言葉が何よりの宝物だった。耳元での囁きは、今も奈津美の胸に木霊していた。胸を焦がして止まないのだった。
奈津美は、祐介が他の女の子に言い寄ったりするのも、自分の気を引くための、いじらしい芝居に過ぎないと思っていた。
(そんなに無理しちゃ、ダメ。大丈夫よ、わたし、あなたの気持ち、分かってるの…)
喉もとのボタンを外し、シューズの踵を踏みつけて、ラフを装う祐介は、乱暴振りを発揮すればするほど、奈津美には、自分がついていないとダメなように思えるのだった。
祐介は、慶子に夢中だった。手に入れるのが難しいと感じれば感じるほど、燃えるのだった。(慶は、進学など思いも寄らない自分には高嶺の花。だけど、オレの孤独な魂を癒せるのは、お前だけ…。嫌だ、なんて言うのも、今のうちさ。)
先生は、何故か、予定の時間が来ても、なかなか来ない。
慶子は、今だけの我慢だと思っていた。
(今さえ、我慢したら、奴とは住む世界が違う。奴の姿を見ないで済む。好きな男の子と同じ高校で、夢のような日々が待っている。一緒に勉強して、大学だって、同じで…。)
廊下には、他のクラスの男の子がいた。亮(とおる)だった。教室の中を覗いている。その熱い心の眼差しの先には、奈津美がいることを、誰ひとり知らない。眼差しは熱いけれど、何故か、真っ直ぐ、奈津美には向かっていない。とうとう今日という今日まで、思いを打ち明けられずに来てしまったことを悔いているのだった。彼は、奈津美の様子を伺ったり、窓の外の光景を眺めやったりしていた。
校庭の隅には、青空を背景に桜の木々が並んでいた。ついこの先日までの雪も、ほぼ溶け去り、桜の蕾が今にも綻びそうだった。
奈津美は、そんな亮のことは、まったく気付いていないのだった。恐らく、一生、気付かないのだろう。奈津美は看護師を目指して職業学校へ進むし、医者の息子の亮は進学が当たり前のように感じているだけだった。
そんな亮の手には、手紙が握られている。手渡したい相手は、教室の中にいる。が、亮のポケットには、ある他の女の子から貰ったラブレターが突っ込まれている。受け取るも何も、下駄箱に入っていたので、捨てるに捨てられないのだった。誇らしくもあった。
好きな女の子が他にいなかったら、取りあえずは付き合ったかもしれない…。
その女の子は、比奈だった。比奈は、中学を卒業したら、もう、会えなくなると、今日こそは思いを打ち明けようと、思いの丈を手紙に書き、下駄箱に入れておいたのだった。
比奈は、亮のことが中学に入った頃から好きだった。一目惚れだった。でも、好きでいるだけで、なんとなく満足なような気がしていた。毎日、学校で擦れ違える。二年になってクラスが違ってしまったけれど、そのほうが、亮が他の女の子と楽しそうにお喋りするのを見ずに済むので、ホッとしたものだった。
比奈は、みんなの前では活発な女の子だったけれど、胸の中に秘めた思いは、大事に大事に守る清楚な女の子なのだった。
そんな比奈を好ましく思っている奴がいた。それは、武志だった。学級委員や生徒会長も務めたりする、みんなの羨望の的になるような、優秀な奴だったけれど、女の子には晩生(おくて)だった。プラトニックなのだった。というか、人様の前では女の子と個人的に親しくしてはいけないという、妙なモラルに雁字搦めになっていた。そんな自分が嫌でたまらなかったけれど、自分でそのモラルを敢えて打ち破る度胸もないのだった。
それだけに、学業に放送部でのクラブ活動に打ち込んで、鬱陶しい自分の性格を紛らわしていた。そんな自分に惚れてくれる女の子がいた、それも、男子生徒の憧れの的である慶子が!
誇らしい反面、どうしたらいいのか、途方に暮れていた。
赤い糸が無数に入り組み絡み合い、それぞれが見えるようでいて見えないのだった。赤い糸は、背中に結び付く。自分では見えない。下手に動けばほどけるか、他の人に絡まってしまう。
卒業という日を迎えて、運命の赤い糸がどんなふうに繋がっていくのか、誰にも分からないのだった。
やがて、先生が入ってきた。ザワザワしていた教室が、鎮まった。けれど、縺れた赤い糸は、ますます赤く燃えているのだった。
(04/10/28)
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父と子の休日風景
(息子がサッカーのボールで遊んでいる)すると、そこへ父がやってきた。
父 :おい、野球、やろうぜ。
息子:えー、野球?
父 :なんだ、いやなのか。
息子:いやっていうわけじゃないけど、今はサッカーの時代だよ。
父 :うんにゃ。野球だ。男は野球だ。サッカーなんぞ、誰でも出来る。
息子:えっ、じゃ、パパ、サッカーできるの?
父 :もちろんさ。あんなの、ちょっと蹴ればいいんじゃないか。
息子:じゃ、ちょっとやって見せてよ、サッカー。
父 :ふん。容易い御用だ。ボール、持って来い。
(ちょっと、その気にさせたら、こんなもんさ。今日はサッカーだね)と息子は独り言。
息子:パパ、持って来たよ。
父 :よし! 寄越せ。なんだ、こんなもん、ちょろっと蹴ればいいんだから、ガキでも出来るぞ。
(足はボールを掠めただけだった。すると、サッカーボールは、コロコロ転がり、門を抜けて、道路へ。決まり悪げな父)
父 :なんだぁ、こいつ。言うこと、きかんぞ。どうなっとるんだ??
息子:まだ、ボールが新しいから、人間に慣れてないんだよ、きっと。
父 :最近は、子どもだけじゃなくて、ボールも親に反抗するんだな。息子:パパ! そっちへ蹴るからね。気をつけてよ。
父 :おおっ、構わん。思いっきり、蹴って来い。
(いいのかな、パパんとこに蹴っちゃって。もう、知らないから)と、息子。
息子:いい? パパ、蹴るよ-。
(と、ボールを父のほうへ蹴り込む。すると、ボールが父の顔を直撃。)
父 :なんだ、オレの顔めがけて蹴る奴があるか。ちゃんと、足元に寄越さないと、ダメじゃないか。これだから、サッカーする奴は、柄が悪いって言われるんだ。
息子:顔ったって、ちょっと避ければ済むことじゃない。どうして、顔にぶつかるまで、直立不動なのー。
父 :男というものはな、逃げてはいかんもんなのだ。何事も真正面から受け止める、それが男だ。見ろ、野球を。バッターはみんな、決まったボックスでじっと立ってるだろ。ピッチャーだって、バッターにぶつからないように投げとる。ボールに触れるのは、ミットかバットに決まっとるんだ。男らしいスポーツと思わんか、ええ?
息子:でも、サッカーのボールなんだからさ、ちょっと避けて、胸でトラップするとか、頭でヘッディングするとかさ、いろいろ方法はあるじゃない?!
父 :何を言う。それが逃げだと言うんだ。男は、風雪に耐え、汚辱に耐えてこそ、人間が鍛えられるのだ!
息子:ちぇっ、負け惜しみ、言ってら。
父 :何?
息子:ううん、なんでもない。パパって、凄いんだね。何事も体当たりなんだね。ボク、パパのこと、尊敬しちゃう。
父 :分かればいい。
息子:じゃ、さ、今度は、軽く蹴るからさ、ちゃんと転がすからさ、今度は、パパ、ボクのほうへ蹴り返してくれる?
(すると、ボールは、父の股間を抜けて、コロコロ転がって、縁側の下へ)
息子:パパ、どうして足元にボールが来たのに、突っ立てるのさ。蹴れなくても、止めるとか、すればー。
父 :わしは、やっぱり、ボールを蹴るというのは、性分に合わんようだ。第一、こんなことは、よろしくない。
息子:どうしてさ?
父 :そうだろうが。そもそも、オレもよくオヤジに言われたことだが、モノを粗末にすることは、絶対にアカン。まして、モノを蹴るなんて、非道なことが許されるわけがないってな。
息子:許されないって、野球のボールがバットで打つようにできているように、サッカーのボールは足で蹴るためにあるんだよ。ちゃんとそういうように作られているんだからさー。だから、蹴り返してよ。
父 :そうか。我が息子に、そこまで言われてはな。分かった。いいか、蹴るぞ!
(が、父は、見事に空振り。危うく、勢い余って倒れそうになる)
息子:あれっ? パパ、どうしたの? 大丈夫?
父 :大丈夫って、何だ。なんでもないだろうが。
息子:だって、今、倒れそうになったじゃん。
父 :何を言っとる! 今のは練習だ。未だ、ボールを蹴ることに躊躇いがあるのじゃ。
息子:あっ、そうか。そうだよね、パパはモノを大事にするんだものね。
父 :分かれば宜しい。よし! 今度は練習じゃないぞ、本番だ。いくぞ!
息子:いいよ、蹴って!
父 :いいか、蹴るぞ!
息子:うん、今度こそね。
(父は、サッカーのボールを思いっきり、蹴ろうとした…、が、また空振りし、今度は、とうとうドシーンと背中から倒れ込む)
父 :うーん。
(慌てて駆け寄る息子)
息子:パパ、大丈夫?!
父 :大丈夫だ。蹴ろうと思ったけど、その前にもう一回くらい練習すべきだと思ったんだ。それにな…。
息子:それに…、何?
父 :どうやら、オレには蹴れんようだ。オレの美学からして、モノを蹴るなぞ、人間のすることとは思えんのだ。
息子:そうか、そうだよね。パパは、昔気質の人だものね。そんなことできないよね。
父 :……。
息子:分かったよ。じゃ、ボク、一人でやるよ。
(父は、痛みを顔に出さなかったが、実は足を捻っていた。一方、息子のほうは、ああ、よかった、厄介払い、出来た。これでゆっくり楽しめる、と、ほくそえむ。そして、また、息子は一人、ボールで遊ぶのだった。)
(03/10/21)
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