小説(ボクもの)

2016/06/30

ボクのブルー

 青色が好きなのは、空の青、海の青が好きだから…なんかじゃない。
 ブルーが好きなのだ。

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← そらい@抽象画 作品名不詳。油彩かな。「sorai(そらい)」へ!

 ブルーの心が眸の中に漂っている。
 それとも、ホントはグレイの脳味噌のはずが、悲鳴を上げてヒートアップして、青く発熱しているのかもしれない。
 何も分からないのだよ。世界が揺蕩っている。どよーん、どよーんって、揺さぶられる潮のざわめきが煩いほど聞こえてくる。
 膿が浸潤して、骨も血管も腱も筋も、そして肺腑だって崩れ始めている。

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2016/05/16

雨の日の公園

 ボクは公園を歩いてみた。近所にあるけど、天気のいい日には一度も行ったことのない公園。

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 児童公園ってものじゃなく、大人たちが草野球やゲートボールだってやっているし、大きな遊具が幾つもあって、休日ともなると、近所の親子連れでいっぱい。
 母親や父親が子供たちの遊び興じる様子を見守っている。

 ボクは、ひとりぼっちなので、なんとなく行きづらい。
 行ったって、仲間外れになるに決まっている。

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2014/11/25

真っ逆さま

 ここにも人がいる。ほらっ、人影が見えるでしょ。風もないのに、動くよね。生きている証拠なんだよね。
 ああ、でも、誰もが彼をスルーする。見過ごしてしまう。そこにいると気づいているはずなのに、目を逸らして、誰もいなかったことにする。

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←  お絵かきチャンピオン作「顔流れ」 (「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)

 彼がレジの前に立っても、店員は顔を一切、上げず、ただ事務的に作業をこなしていく。
「ありがとうございました」と一言だけ、添えて、次の客へと視線を移す。今度は、顔をあげ、目を合わせ、笑顔さえ浮かべて、一つ一つの動作に人間味がある。

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2014/07/09

踏切の前で

 眩しく広がる空に惹かれて歩き出していった。何処へ行くあてなどない。家の中に籠っているのが億劫になっただけかもしれない。
 外には誰かがいる。何かがある。そんな期待があったのだろうか。
 あまりに遠い昔のことで、ろくすっぽ覚えちゃいないのだ。
 今も印象に鮮明なのは、真っ白過ぎる空の広さ。なのに、青空だったかどうか、記憶があいまいなのはなぜだろう。
 臆病な自分が、遠くへ歩いたはずがない。けれど、気が付いたら見知らぬ集落にいた。林や藪や原っぱに囲まれ、その外側には田圃や麦畑が広がっていた。自分の住む町と似ている。でも、馴染みのない地区。

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2009/07/30

頬杖

 頬杖ついているあの子は、何を想っているんだろう。多摩川の土手に腰掛けて、じっと川のほうを眺めている。
 声をかけてみたいような。
 でも、そんなことができるわけもない。
 俺は、子供には、いや誰にもただの小父さん。それも変な小父さんに過ぎないのだ。
 あと、ほんの数年もすれば太鼓腹になりそうなお腹を見ると、遠くで、できるだけ遠くで見つめているしかない。

 あの子の視線の先を追ってみる。川面? そうかもしれない。川の向こう岸の釣り舟が珍しくて、関心が奪われているだけなのかもしれない。

 ぼーんやり、川を眺めている。

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2009/07/18

梅雨空に寄せて

 昔、星と月とは相性が悪いのではないかと考えたことがある。
 どちらも晴れ渡った夜の空になくてはならない存在なのだけれど。

 そう、あまりに月が煌煌と照ると、本当ならもっともっと数多くの星々が煌くはずが、月の光の故に、星がその影を薄めてしまい、夜の空が淋しくなってしまう、そんな気がしたのである。
 そうはいっても、晴れてさえいれば、月が照り映えていても、星たちは精一杯に輝いていてくれる。星は月の有無など、知らぬ顔で、ひたすらに光の矢を届けつづける。

 いつだったろうか、何かの本で、今、見ている星の光は、数年前、数百年前、数千万年前、中には数億年前のものもあると知ったのは。
 月だって、太陽の光の反射で、光はあっという間に届くとはいえ、一秒余り前の光なのだ。

 だけど、星の光の凄さには敵わない。

 今、自分が夜の空を眺めていると、この瞳には無数の時間が同時に届いている。水晶体の中で共鳴し合っている。脳裏の何処かで木霊し、時にボクを震撼させる。

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2009/03/05

ボクの猫

 この頃、妙な夢を見る。
 いい年をした私が、何故かあの頃のボクになっている。大人になってしまった今の私のような、幼かったあの頃のオレのような、宙ぶらりんな自分が、長いような、短いような旅をする。

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 夢の中のボクは子供なのか五十路となった大人なのか、自分でも分からない。
 きっと、私は何歳になってもボクなのだろう。

 旅…といっても、迷子になった<ボク>が彷徨っているだけなんだけど、夢の中のボクにとっては心の旅に違いない。

 その夢には何故か、必ず猫が登場する。
 それが一番、私には不思議だ。私には猫に絡む思い出などない。猫を飼ったこともない。
 なのに、どうして猫が現れるのか。

 似たような夢を繰り返し見る。
 いつも、最後には猫にそっぽを向かれてしまう。
 で、ボクは声にならない声で咽び泣くのだった。

 でも、とうとうある日、違う結末の夢を見たのだった。


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2008/01/19

誰かが見ていた

 何歳の頃のことだったかよく覚えていない。
 物心付いたかどうかという頃だった。
 まだ雪が降っていなかったから、師走だっただろうか。

 父のあとに付いていった。
 土間。秋口までは農作業で人の出入りで賑やか。足踏みの脱穀機やら千歯こきやら竈(かまど)やら稲藁やらで足の踏み場もないほど。

 でも、農閑期ともなると、冷たい空気が肌を刺すだけ。竈も臼や杵が隅っこで大人しく出番を待っているだけ。

 父が何の用事があって土間に向ったのかは覚えていない。

 多分、最初から分かっていなかったと思う。好奇心だったのだろうか。
 それとも、何か無言の圧力のようなものが引っぱっていったのか。

 深々とした土間の隅で父が突然、蹲(うずくま)った。
 そいこは古い角材が積み重ねられていた。その裏のほうから何かを引っ張り出した。

 見ると、手に何やら金網のようなものを手にしている。

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2007/08/24

夕焼け雲

 ずっと昔、ずっとずっと昔のこと。
 おれがボクだった頃のこと。
 
 ボクにはお兄ちゃんがいた。頼りになる近所のお兄ちゃんだ。ボクがいじめられていると、助けてくれる。
 でも、二人っきりだったりすると、時々、ボクをいじめるので、そんな時はボクはお兄ちゃんをオニちゃんと声に出さないで呼んでいた。

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← 真っ青な空。空の青以上に紺碧の運河の水面。

 ある日、何処かの町をボクはお兄ちゃんと歩いていた。
 はっきり覚えていないのだけど、縁日へ行く途中だったような気がする。
 一人ぼっちで庭先でしょんぼりしているボクを見かねてお兄ちゃんがボクを連れ出してくれた…ような。
 お兄ちゃんは縁日は隣の町でやっているという。
 隣の町!
 ボクには遠い遠い、山の向こうとも思える。そんな見知らぬ町へ行くなんて、ボクには大冒険だ。

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2006/03/18

夜明け前

 ボクの一生が決まったのは、あの日だったような気がする。
 でも、何があったわけじゃない。
 きっと、昨日と同じようなありふれた日だったのだろう、みんなには。

 あれが始まったのは、夜明け前頃だったと記憶する。
 あれ…。
 あれと言っても、そう、口じゃ表現できない、不思議な感覚。
 むしろ、気づいた、と言うべきかもしれない。
 
 それは地上にポッカリ空いた穴。
 みんなが地上の世界にいるのに、ボクだけ穴の中にいる。
 穴の底からみんなを見上げている。
 みんなは?
 みんなは穴があるなんて気が付いていない。
 まして、穴の底にボクが落っこちたままだってことに気が付くはずもない。

 そう、だから、ボクが孤独なのも仕方がないと諦めていた。

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