心と体

2008/04/21

嗤わぬ月

 毎日ではないが、夕方から真夜中過ぎまで、そう草木も眠るという丑三つ時頃まで、富山の町を車でウロウロしつつ働いている。
 昨晩は見事な月を折々に愛でることができた。暖かな日差しに恵まれた日中は、それでも吹き渡る風がやや強かった。東京など関東や東日本では突風というのか強風が吹き荒れていた。
 その風も夜には収まっていた。

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 風が空の塵や埃や花粉の類いを綺麗に拭い去ってくれたようで、夜気が澄み渡って感じられる。
 夕方になって仕事先へ向う道すがら、夜になって雨にならないかと天蓋を眺めてみると、月影が清かである。ほぼ満月の月。今夜どころか明日も雨の心配はなさそうである。
 月が地上の世界を明るくしている。夜空を横切る筋状の雲を背後から照らし出して真っ白に、そして薄い真綿のように見せている。
 そんな透き通るように眩く輝く雲よりも月は煌々と照っている。

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2008/02/27

放火魔

 真夜中の病室。隣り合う人たちも、ようやく眠りに就いている。
 看護の人も先ほど見て回って行ったばかりである。

 静まり返った病室での楽しみは、こっそり蝋燭に火を灯すこと。

 蝋燭の焔は、今日は真っ暗闇の中に何を浮かび上がらせてくれるだろうか。

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 そもそも闇の中でポツンと立つ蝋燭が何かを照らし出したとして、それが何か意味を持つのだろうか。

 誰もいない森の中で朽ち果てた木の倒れる音というイメージと同じく、病室という名の、誰も見ていない闇夜の地蔵堂に立てられた蝋燭の焔の織りなす影は、ある種、夢幻な世界を映し出していると、ほとんど意味もないレトリックを弄して糊塗し去るしかないのか。

 夜の深みに直面して、何を思う?

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2008/02/17

水たまり

 久しぶりに夜の町を散歩した。
 いつだったか、いつも通りに気分よく散歩していたら、警察官に誰何され、それ以来、夜中に徘徊するのを躊躇っていた。
 でも、梅雨の束の間の晴れ間で、しかも明日からはまたしばらく空が愚図付くということなので、思い切って外出することにしたのである。
 明日は間違いなく雨模様だという予報。
 けれど、歩いてみても綿のシャツがジトッとすることはない。ゆっくり歩いている分には、汗を気にせずに歩ける。なんだか、それだけで嬉しい。

 梅雨の時期の散歩は、湿気のせいで、体に衣服がベト付き、深夜に特有の尖った刃のような闇を感じないで済む。狂気も霊気も切っ先が錆び付いてしまうのである。
 けれど、今日の空気は乾いている。それだけが俺には気にかかる。

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2008/02/04

明けない夜に

 エロティシズムへの欲望は、死をも渇望するほどに、それとも絶望をこそ焦がれるほどに人間の度量を圧倒する凄まじさを持つ。快楽を追っているはずなのに、また、快楽の園は目の前にある、それどころか己は既に悦楽の園にドップリと浸っているはずなのに、禁断の木の実ははるかに遠いことを思い知らされる。

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← ジョルジュ・バタイユ【著】『聖なる陰謀―アセファル資料集』(マリナ・ガレッティ【編】・吉田 裕・江澤 健一郎・神田 浩一・古永 真一・細貝 健 ちくま学芸文庫)

 快楽を切望し、性に、水に餓えている。すると、目の前の太平洋より巨大な悦楽の園という海の水が打ち寄せている。手を伸ばせば届く、足を一歩、踏み出せば波打ち際くらいには辿り着ける。

 いざ、その寄せ来る波の傍に来ると、波は砂に吸い込まれていく。波は引いていく。あるいは、たまさかの僥倖に恵まれて、ほんの僅かの波飛沫を浴び、そうして、しめた! とばかりに思いっきり、舌なめずりなどしようものなら、それが実は海水であり、一層の喉の渇きという地獄が待っている。

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2008/01/19

誰かが見ていた

 何歳の頃のことだったかよく覚えていない。
 物心付いたかどうかという頃だった。
 まだ雪が降っていなかったから、師走だっただろうか。

 父のあとに付いていった。
 土間。秋口までは農作業で人の出入りで賑やか。足踏みの脱穀機やら千歯こきやら竈(かまど)やら稲藁やらで足の踏み場もないほど。

 でも、農閑期ともなると、冷たい空気が肌を刺すだけ。竈も臼や杵が隅っこで大人しく出番を待っているだけ。

 父が何の用事があって土間に向ったのかは覚えていない。

 多分、最初から分かっていなかったと思う。好奇心だったのだろうか。
 それとも、何か無言の圧力のようなものが引っぱっていったのか。

 深々とした土間の隅で父が突然、蹲(うずくま)った。
 そいこは古い角材が積み重ねられていた。その裏のほうから何かを引っ張り出した。

 見ると、手に何やら金網のようなものを手にしている。

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2008/01/03

初夢

 オレは戸惑っていた。
 女はいきなりオレの家にやってきて、絵のモデルになると言い張るのだ。
 女はとんでもない勘違いをしているに違いない。

 勘違いの発端は、吹く風に夏も終わりに近付いていることを予感させる或る日、近所のカフェでのこと。

 週日の午後で、客はオレだけ。前の日も画集を見ながらヌード画を描いていた。

 我ながら上出来だったこともあり、つい、誰かに見てもらいたくなり、店が暇そうな時間帯を狙って、近所のカフェへ繰り出した。
 案の定、暇そうな主人は、グラスなどを白い布で拭っている。
 要するに何もすることがないのだ。

 チャンスだ。
 カウンター席に座り、オレは徐(おもむろ)にデザイン帳をカウンターに置いた。
 主人はオレの何気なさそうな表情に隠された…あからさまなサインを見逃すはずがない。

 昨日もヌード、画いてたの?

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2007/12/19

メモランダム(その1)

 それはいつものような夜だった。
 いや、昼だったかもしれない。
 そんなことはどちらでもいい。頭の中はいつだって真っ暗。でも、空っぽ。目の前は白けた光景。だけど何も見えない。
 だったら、どっちだって同じことじゃないか。
 何処をどう歩いていたのか。そもそも何処の塒(ねぐら)から飛び出してきたものか、さっぱり覚えちゃいない。
 でも、何処かの安宿ってわけじゃなかったはずだ。出るときにカネを払った記憶はないし。
 あるいは後から誰か追いかけてくるかもしれない。
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→ 月よ! お前までオレを裏切るのか?

 それならそれでいい。
 きっと、会話が弾むに違いない。
 人間、何か一つくらいは楽しみがなくっちゃ。
 一つくらいは、行く当てがないとやりきれないって誰か言っていたような気がする。
 それとも、何かで読んだのか。
 薄っぺらな野郎だから、誰彼の言葉も紙切れの上を這う記号の海も区別がつかない。
 月のない闇の空に雲の形を追うようなものだ。
 

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2007/12/04

ボタン付け

[本稿は、12月3日の昼間に書いた日記です。夢の話でもなければ、創作でもない(こんな他愛もない創作はない)! 本来の日記のブログが3日も4日も予定稿が入っていて、この日記をアップさせる余地がないので、余儀なくこの創作のブログに載せるもの。ことは、3日の未明のとっても、瑣末な日記。あくまで日記なので、呟き調なのは仕方ないものと理解されたい。]

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← これが成果! ボタンに注目。

ボタン付け

長年着ている冬用のジャケット。
洗濯機で洗うこともあってか(ちゃんとネットに入れて!)、仔細に見ると、さすがに細かなほつれがちょこちょこと。
でも、気にしない。

とはいっても、ボタンが取れそうなのは拙い。実際、一個、取れてなくなっている。

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2007/12/03

夢の話・二題半

 最近、よく夢を見る。
 というより、大概は就寝中に仮に夢を見ていても目覚めた瞬間、シャボン玉の弾けるように、呆気なくパッと消え去ってしまう。
 せいぜい、シャボン玉の表面の虹の七色めいた、夢の印象の欠けらが脳裏の片隅に残るだけなのが、この頃は、目が覚めても、夢の全体というわけではないものの、かなりの部分を覚えている、ということなのかもしれない。

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 といっても、夢の内実がスッキリ見通せるというものでもない。多くは不分明なままに、脚本家のいない、演出過剰な、あるいは役者の独善的な演技ばかりが目立つような、それでなければ、舞台の背景などの雰囲気ばかりが濃厚な、そんな掴みどころのないストーリーの見えない<ドラマ>が展開されていく。

 小生が夢を多く見るときは(目が覚めても覚えている時は)、体調が何処かしら不調な時だったり、実生活において先の展望が見えない、人生の選択肢をどちらかを選ぶことを強いられる状況にあって迷っている時だったりする。
 恋に苦しんでいる時にも夢を見ることが多くなるってこともあるかもしれない。
 いずれにしても、自分でも自分の心の全貌が見えるわけではなさそうである。
 とにかく、夢で目が覚めるという現実がある、それだけが事実なのである。

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2007/11/28

「蜘蛛の糸」を裏読みする

[本稿は、「藤原作弥…香月泰男…蜘蛛の糸」から「蜘蛛の糸」関連の部分を抜粋したものです。]

『蜘蛛の糸』(くものいと)は芥川龍之介が1918年(大正7年)に雑誌「赤い鳥」に発表した子供向けの短編小説」だという。

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→ 芥川龍之介/著『蜘蛛の糸・杜子春』(新潮文庫 新潮社

 有名な話なので、今更ネタバレもないだろう:

 カンダタは大泥棒や人殺しと様々な悪事を行った為に地獄に落とされてしまいました。しかし、生涯で一度だけ善い事をした事がありました。それは小さな蜘蛛を助けたこと。そこでお釈迦さまは、地獄の底のカンダタを極楽への道へと案内するために、一本の蜘蛛の糸を、カンダタに下ろしました。
カンダタは蜘蛛の糸をつたって、地獄から何万里も上にある極楽へと上り始めました。ところが、糸をつたって上っている途中でカンダタはふと下を見下ろすと、数限りない罪人達が自分の上った後をつけていました。このままでは糸は重さによって切れて、落ちてしまうとカンダタは思いました。そこでカンダタは「この蜘蛛の糸は俺のものだぞ。お前達は一体誰に聞いて上ってきた。下りろ、下りろ。」と喚きました。次の瞬間、蜘蛛の糸がカンダタのぶら下がっている所から切れてしまいました。カンダタは再び地獄に落ちてしまいました。
 お釈迦さまは極楽からこの一部始終をご覧になっていました。自分だけが地獄から抜け出そうとするカンダタの無慈悲な心が、お釈迦様には浅ましく思われたのでしょう。

 とっても、深い内容の、教訓に満ちた子供向けの話…。

 が、小生はこの話を初めて知った時、お釈迦は実に厭らしい人だと思ってしまった。童話の形に易しくされた本を読み聞かされたりした、あるいは劇(漫画)で見た際、お釈迦様は老獪な方だと感じたのだ。

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2007/11/17

初恋の人を見た!

[ 以下は、昨夜半(16日)の日記から。16日の午後だったかに見た夢を叙述。夢の内容は一応は事実です。ただ、小生の記憶力に心もとなさがあるのと、表現力には更に拙さがあるので、描いている内容の元は事実であっても、いざ書き起こしてみると、なんだかなーというものになってしまう。夢の叙述なんて、リアルに描こうとしても創作めいてしまう。時間が経つにつれ、そして描こうという作為が働くにつれて、手の平から零れ落ち、グジャグジャになっていく。 虚構と酷似している(似て非なるものだけれど…)。(11/17 記)]

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← ブグロー(ブーグローとも表記)「浴女」(「浴女|ブログで名画」より) 「草城の句境を知らず人は過ぎ」など参照。

初恋の人を見た!

でも、夢の中で!

まあ、約束どおりの落ちです。

まあ、聴いてくださいよ、お客さん。

あのね、何処かの事務所、それとも銭湯の脱衣場だったか、オイラ、着替えしていた。

同僚か先輩らしい二人が近くに。
二人のうちのどちらかがボソッと、隣にあの子が居る、とか何とか。
オレに言ったわけじゃないけど、オレを促す意図が嗅ぎ取れた。

隣って、風呂場じゃないか!

一瞬、躊躇った(夢の中でも謙虚な小生です!)。

でも、見たい、ちゃうちゃう、会いたい。

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2007/11/13

ウブ

 本作は、「Mystery Circle 11/23締め切り出題 SMC 参加見送り作品」です。
 時間的な都合もあり、参加の意志を表明する機会を逸し、参加は叶わなかった。
 なので、創作上の縛りは、勝手に「数えきれない程の抵抗を試みた」を話の前後に付すことに。
 ただ、テーマ上の課題である「同性愛」 は盛り込めなかった。

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2007/10/30

自明性の喪失

[以下は、小生の手になる書評エッセイ(からの抜粋)である。途中からはもうまるで書評でもなければ感想文でもなく、無手勝流の想像が闇の時空を舞い狂っている!]

 が、小生は、そんな用語などすっ飛ばして、もっと直感的に、さらに言えば、共感を以って『自明性の喪失』を読んでいた。否、その中の患者の症例に身につまされるものを実感していたのだ。
 観念連合の弛緩といい、現実との生ける接触の喪失といい、あるいは自明性の喪失という曖昧な、しかし他に表現の方法のないある心の事態。

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 現代においては、精神医学が発達して、かなりの精神的な病が投薬などで治療ないし対処されることが多いらしい。また、精神的な疾患などというものは、所詮は脳の先天的な異常か、いずれにしろ脳内の不具合に帰着するに違いないと見なされている。
 癲癇にしろ、病には違いないのだろうし、その発作がなんらかの肉体的異常(それがたまたま脳内の部位に局在しているだけのこと)の精神的な発露・爆発なのだろうと言われれば、それはそうなのだろうと、一応は認めるしかない。

 ここで気になるのは、肉体的異常の結果、では、その人がどのように振る舞うか、あるいは場合によっては精神的所産を為すのかどうかは、全く理論的には整合的に説明できないだろうという点である。

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2007/10/29

夜という海

[()本作は、「Mystery Circle 10-27締め切り分出題」参加作品です。主旨などは、末尾を参照願います。(07/10/29 記)]


夜という海


「また長い夜になる…。」

 彼は誰にともなく呟いた。
 一人きりの部屋なのに、彼は誰彼の顔が思い浮かぶと何か言葉を掛けないと気がすまない。

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 返事はない。
 あるはずがない。
 それは彼にもわかっていた。
 語りかけた言葉が薄暗い部屋の中に呑み込まれるようにして消えていく。
 いっそのこと、消えていった言葉を追いかけていこうか…。そんな衝動に駆られることさえ彼にはあった。

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2007/10/24

新作駄洒落ネタの数々

 あるサイトに「夏目漱石が風呂に入ったらぼっちゃんという音がした」という一発ギャグが披露されていた。漱石好きな小生、せっかくなので、過去に読んだ作品を織り込む駄洒落を作ってみた(作品名、分かるよね!):

漱石の枕は……臭い枕
漱石がなりたかった職業は……坊さん
漱石は大学教授だった……吾輩は公人である
漱石は誰でも知っている……有名人や
漱石は憂鬱症だった……悲観過ぎまっせ
漱石が浮気を噂された相手とは……カラスとの仲
漱石が好きな果実は……ナツメ
漱石が外国から攻撃された……ソ連から
漱石が好きな食べ物は……豆腐
漱石が悩んで……悶々

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2007/09/27

一家団欒

[本作は、「Mystery Circle 9-22締め切り分出題」参加作品です。本作については、「「あれは、オレのものだ!」書いたけど」を参照願います。但し、題名を表題の如く「一家団欒」に変更しました。]

「近頃じゃテレビ・タレントも、嗚咽なんてことを知らないくらいだものな。」

 そう、オレはヴァラエティ番組を見ながら突っ込みを入れていた。

 返事はない。
 一人暮らしのオレに返事などありえない。

「嗚咽…。」

 オレが嗚咽したのは、一体、いつのことだったろう。

 そんなことさえ、まるで覚えていない。

 けれど、何かわだかまるものがあった。

 何かがあって、オレは…。

 そうだ、あれは親父の嗚咽だった!

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2007/09/11

靴職人の夢

 靴に魅せられたのは、オレが十歳の頃だった。
 オレは父と居間でテレビを見ていた。普段はサラリーマンで日曜日などは農業に携わっている父は、趣味が他にないわけじゃないけど、食事の際は、テレビを見るのが楽しみ。
 チャンネルの選択権は父にある。オレが選べるのは父が居ない時だけ。
 ちょうど、あの日も、父がチャンネルの抓みを回していた。
 何を見るかと思ったら、NHKの教育番組ではないか。
 ガキのオレはアニメが見たかったのに。

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← サルヴァトーレ フェラガモ著『夢の靴職人―フェラガモ自伝』(堀江 瑠璃子訳、文藝春秋) (画像は、「Amazon.co.jp 通販サイト」より)

 でも、オレは何も言えない。
 それに、オレはアニメ好きだが、そもそもテレビが好き。
 テレビで画面が動くってのが未だ感動の時代でもあった。
 確か、家にテレビが来て、そんなに日にちが経っていなかったような気がする。
 番組の内容は覚えていない。
 けれど、何故かオレは退屈なはずの教育番組に釘付けになってしまった。
 確か、ドイツの靴職人の世界を淡々といった調子でドキュメントしたような番組だった。
 オレの印象にはそのように思えた。

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2007/09/06

涸れない女

 奴はオレを急かす。

 確かめなくていいのかって言われると、オレだって引き下がれない。

 でも、一体、どうして奴が彼女のことを知っているのか。
 記憶をどう辿っても、奴に彼女のことを喋ったことなどないのだ。
 というか、オレは誰にも彼女のことは喋っていない。
 親友の誰も知らないはずなのだ。

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→ 「2005 VOLVO C70(屋根開)」 (画像は、「クーペカブリオレ - Wikipedia」より)

 そんなオレの戸惑いなど知ってか知らないのか、奴はドンドン先へ急ぐ。
 とある町の一角。人通りが多い。
 
 いた! 彼女だ。あの日の彼女だ。
 あの日のままじゃないか!

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2007/09/04

ポケット一杯の小銭

[本作を読むに際し、「短編「釣銭」書きました!(追記あり)」を参照されると一層、理解が深まるかも。]

 雨の夜だった。オレは見知らぬ町に居た。
 どうして自分がここに居るのか訳が分からなかった。

 雨。
 傘がない。
 でも、何故か体は濡れない。
 濡れているのかもしれないけど、まるで気にならない。

 違う! 雨もオレを避けているのだ。

 喉が渇いたわけでもないのに、目に付いた自動販売機の前に立った。
 雨のせいもあって薄暗い中、スポットライトに照らし出されている自動販売機にふらふら寄って行ったに違いない。

 オレは…自動販売機という誘蛾灯に惹かれる一匹の虫なのか。

 百円玉を2個、投入し、缶入り珈琲を一本、買った。
 いや、買おうとしたが、商品が出てこないのだった。

 おカネはしっかり販売機が呑み込んでいる。
 
 見ると、嘲笑うかのように、釣銭が、ジャラジャラと釣銭受け口に出てくる。
 お釣りは80円のはずなのに、十円玉が山のように吐き出されている。

 …これはどうしたことなのだ。

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2007/09/03

釣銭

[本作を読むに際し、「短編「釣銭」書きました!(追記あり)」を参照されると一層、理解が深まるかも。]

 雨の夜だった。オレは見知らぬ町に居た。
 どうして自分がここに居るのか訳が分からなかった。

 喉が渇いたわけでもないのに、目に付いた自動販売機の前に立ち、何か買った。
 雨のせいもあって薄暗い中、スポットライトに照らし出されている自動販売機にふらふら寄って行ったに違いない。

 オレは…自動販売機という誘蛾灯に惹かれる一匹の虫なのか。

 雨。
 傘がない。
 でも、何故か体は濡れない。
 濡れているのかもしれないけど、まるで気にならない。

 違う! 雨もオレを避けているのだ。

 それより、自動販売機の釣銭がやたらと多い。百円玉を2個、投入し、缶入り珈琲を一本、買った。

 いや、買おうとしたが、商品が出てこないのだった。

 おカネはしっかり販売機が呑み込んでいる。
 
 見ると、嘲笑うかのように、釣銭が、ジャラジャラと釣銭受け口に出てくる。

 が、お釣りは80円のはずなのに、十円玉が山のように出ている。

 …これはどうしたことなのだ。

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2007/08/19

誕生日に寄せて

 以下は、物語でも虚構作品でもありません。数年前、ある人の誕生日に寄せて書いた、やや感傷的なエッセイです。既に公表済み。
 ただ、エッセイと言いつつ、一読すれば分るように、薄っすらと虚構の隠し味があったりする。
 
 つい先日、ある方が誕生日を迎えられたので、遠くからの囁きめいたメッセージとして贈ろうかと思ったけど、メッセージとしては長過ぎるし、ある意味、誰彼へというより自分に向けてという気味が紛々と漂ってくるようで、ちょっと気後れして、気がついたら誕生日を数日も過ぎてしまった。

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2007/08/03

ハーフロック

[本作は、「Mystery Circle 企画MC 《Funny story Mystery Circle》」参加作品です。制作の背景事情などを、「「ハーフロック」アップ!」に書いておきました。]


ハーフロック

 あった。あの店だ。
 オレは浩美に教えてもらった店をようやく見つけた。

 やっぱり、あの店だったんだ。

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 小さなネオンの看板があることはあるが、灯りが弱々しい。人がやっと擦れ違えるほどの通りをしばし歩かないと見つけられない店。夜半にはまだ時間があるけど、閉店間際に入るのは嫌だった。だから、早めに辿り着けてラッキーだった。

 場所からして、誰が見ても常連しか相手にしてないような店のように思えるだろう。
 浩美がつい先日の夜に寄ったという小さなジャズ・バーだ。
 別にジャズの生演奏が聴けるわけではない。店が女性好みの洒落た作りってわけでもない。男が一人旅の町でふらっと入りたくなるような雰囲気。せいぜい、そんなところか。

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2007/07/22

月影に寄せて

Mystery Circle」の「Mystery Circle 7-21締め切り分出題」参加作品です。
 拙稿である「月影に寄せて」や「地球照」(ホームページは、「Let's watch the star! 星見にいこてば」)などを参照。

月影に寄せて

 その顔は、月影で見るにはあまりに恐ろしかった。

 奴は三日月の夜に現れるのだった。冴え冴えと照り映える三日月はまるで喉元の匕首(あいくち)だった。反り返った日本刀の切っ先が眼球を今にも刺し貫きそうだった。
 病に臥して身動きのならない彼の心臓を容赦なく抉りそうだった。
 
 今夜は月影が素敵に見えるはずだからと、消灯した際にカーテンを開けてくれた彼女の心配りが仇(あだ)となっていた。
 満月でもないのに、青い光が部屋に満ち溢れていた。

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2007/07/20

愛の電化製品生活

おい、トースター(どうした)、何かあったか?
オレがコーヒー(恋の)メーカーになってやる。
オレがアイロン(愛の)ワインセラーしてやるぞ。

もっと掃除機(正直)になれよ!
男だろ、ミシンミシンするんじゃない。電気(元気)、出せよ。

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← ポット出のお湯の如きの情熱か

相手は誰だ? えっ、ミキさーって? あの、胸がジューサージューサーの? 顔がシェーバードに似ている?
お前はあの子がスピーカー(好きか)?
オレも彼女の扇風機だ。
扇風機たって、千の風が流行ってるって話じゃない。
扇風機(ファン)なんだ!
オレだってあの娘を見たらポットしちゃうよ。ズボンにプレッサー掛かるよ。

で、どんな悩みだ?
えっ、ベッドでシュレッダー(滑った)?
そりゃお前、あそこに安物のテレビン油なんてベタベタ付けるからだ。

えっ、あそこがこシュレッダー(擦れた)からって?
彼女、エア(ヘアー)コンを間違えた?
だから、今度はプロジェクタ(風呂で食った)?

FAXは、清浄機(正常位)でやらないと。
ホットプレー(ト)ばっかりじゃ、嫌われるぞ。

あの最中にドライヤー(どないや)? なんて乾燥機(感想、聞)いちゃ、あかん!
そんなこと、除湿機(常識)だぞ。

(クソッ、羨ましい!)

あの娘の好きな花は何か知ってるか? グラジオラスだ。
グラジオラスの花言葉は、「用心深い、楽しい思い出、たゆまぬ努力」
お前、あの娘、忘れたほうが、レコーダー(利口だ)ぞ!
ラジカセ(足枷)になっちゃダメだぞ。

なあ、今度、こたつ(交替)しようぜ!
電話(善は)急げだ。
炊飯器(ジャー)な!

冷蔵庫(寒い)なお話でした!
[コメント欄に蛇足あり!]

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2007/06/15

仮面の舞踏

 わたしが初めて化粧した時、どんな気持ちを抱いたことか。

 自分が女であることを、化粧することを通じて自覚していたような気がする。
 最初はただの好奇心で、母親など家族のいない間に化粧台に向かって密かに化粧してみたに過ぎなかった。
 その前に、祭りだったか七五三などの儀式の際に、母の手によって化粧が施された幽かな記憶があるけど、不思議な感覚にとろんとしたようだけど、でも、あの時はわたしはただのお人形さんだった。

 誰もいない隙を盗んで、母の鏡台の前に座って、鏡を眺めた。
 自分。鏡の中の自分。鏡の外の自分。手を鏡の中に突っ込んで、確かな自分を探し求めた。

 鏡を前に、薄紅を引き、頬紅を差し、鼻筋を通らせ、眉毛の形や濃さ・長さそして曲線を按配する。項(うなじ)にもおしろいを塗ることで、後ろから眺められる自分を意識する。髪型や衣服、靴、アクセサリー、さらには化粧品などで多彩な可能性を探る。
 そうだ、一度ならず何度もわたしはみんなのいないときに自分でない自分を作り出そうとした。
 ここにいるわたしはそれこそ、眉墨一つで他人の顔になる。冷たい、感情のない目で自分を見る。
 美しい!
 美がそこにある。
 美は幻想。

 でも、美は化粧の腕次第で醜にあっけなく成り果てる。

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2007/03/27

「安室奈美恵」さんに絡んでみました!

安室奈美恵」さんに絡むお遊びです。
 最近の元気ぶりが嬉しいですね。

 以下、都合上、「安室なみえ」さんと表記します。
        
Artistp1

→ 「安室奈美恵 (あむろなみえ)(アムロナミエ) Official Website

入浴している安室ちゃんを見て          あ 風呂、なみえ
お歯黒をした安室ちゃんを見て          お歯黒 なみえ 
頭から墨を被った安室ちゃんを見て        真っ黒 なみえ
禿(はげ、かむろ、とも言う)の鬘を被った安室ちゃんを見て   かむろ なみえ
鏡に映った安室ちゃんを見て           安室 なみえ!
 あれっ? 最後の当たり前じゃん?!

マグロの刺身を食べているなみえちゃん…     まぐろ なみえ
なみえちゃんはアマチュアじゃない        あ、プロ なみえ
アフロヘアーにした安室ちゃん          あふろ なみえ

やたらとおおきくなった安室なみえちゃん…    マクロ なみえ
安室なみえちゃんは、どんな果物が好きなの…   ザクロ なみえ
安室なみえちゃん、他に好きな果物はあるの…   アップル なみえ
安室なみえちゃんが、何人も揃っている…     たむろ なみえ

馬の轡を取って…                博労 なみえ
スキャンダルが発覚!              暴露 なみえ

安室なみえちゃんが、かの有名な画家パブロ・ピカソと結婚    パブロ なみえ
安室なみえちゃんが帽子をかぶろうとしている   かぶろ なみえ
安室なみえちゃんが蕪と並んで写真を撮っている  蕪と なみえ
安室なみえちゃんが虻(あぶ)と並んで写真を撮っている 
                               虻と なみえ
安室なみえちゃんが頭に兜をかぶっている     兜 なみえ 

おなかをすかしたなみえちゃん          あ、食お! なみえ
カラス(crow クロウ)を見て        あ、クロウ なみえ
ちょっと太ってしまって             あ、太! なみえ
生活苦のなみえちゃん              あ、苦労 なみえ
寄せ鍋の灰汁を掬ってるなみえちゃん       あくを なみえ
イカを炙っているなみえちゃん          あぶろ なみえ
風呂でもただの風呂じゃない           泡風呂  なみえ

☆あの…、断っておきますが、大切なことは(?!)、常に「安室」ちゃんに掛けていることを意識して、声に出して発音することです。

なみえちゃんが風邪薬を飲んでる         パブロン なみえ
なみえちゃんが袋をかぶっている         あ、袋 なみえ

家具の前でポーズを取るなみえちゃん       家具と なみえ
においで分かるなみえちゃん           嗅ぐと なみえ
髪をアップにして                アップの なみえ
飴を舐めて                   飴を なみえ
雨に降られて                  雨の なみえ
あ、服が破れてる                あ、ボロ なみえ
そこからオッパイが               あ、ポロッ なみえ
で、見えすぎて                 あ、モロ なみえ

☆「飴を なみえ」は、「飴を なめえ」にしようかと、考えたけど、でも、「なみえ」を弄らないという禁欲的な制限を課して遊ぶから面白いんだと、止めた。だから、「なみえ」を例えば、(磯野)波平などと遊ぶのも、やらない。

顔を真っ黒に焼いて               ガングロ なみえ
おもちゃ(玩具)と遊ぶ             玩具と なみえ
太麺のカップうどんを食べているなみえ    ごんぶと なみえ
なみえちゃんと会ってみると            会うと なみえ

電車、目の前で行っちゃった!           アウト! なみえ
ふと、なみえちゃんを思い出した         あ ふと なみえ
なみえちゃんが髪を三つ編みに          編むと なみえ

レ・ミゼラブルを読んでいる            あ 無情 なみえ
霧と氷の世界の中のなみえちゃん         あ 霧氷 なみえ
フランスの車に乗ってるなみえちゃん       あ プジョー なみえ
なみえちゃんは婦女子なのだ           あ 婦女 なみえ

☆ここまで来ると、どんな遊びをしているか、忘れそうである。繰り返すが、大切なことは(?!)、常に「安室」ちゃんに掛けていることを意識して、大きく声に出して発音することである。
 さらに蛇足を:

ダムで写真を撮るなみえちゃん          ダムと なみえ
織田無道と写真を撮るなみえちゃん        あ 無道 なみえ
ちょっと怒ってるなみえちゃん          あ むっと なみえ
竹刀を振り回してるなみえちゃん         あ 武道 なみえ
葡萄を食べてるなみえちゃん           あ 葡萄 なみえ

 声に出して遊んでくれた方、どうもありがとう。お疲れ様でした。一緒に安室なみえちゃんファンになって応援しましょう!

 ……さて、本題は、これからです。

続きを読む "「安室奈美恵」さんに絡んでみました!"

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