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2025/07/07

紅蓮の闇

  「紅蓮の闇」

 ある物語が始まる。始まりもなければ終わりも見えない。そもそも語り手が誰なのかも定かじゃない。じゃ一体誰が語ってるんだ?語り手がいてこその物語だろうが。まさにそこなのだ!この〈物語〉の難しいのは。語り手とやらが居るには居るが、常にどんよりした、朧な意識、そう言うなれば酩酊する意識、下手な麻酔薬に溺れたような、絶世の美女と自称する不可思議な輩にとろかされたような、まあ腐りかけの林檎のような意識に揺蕩っている。

 目覚めの時はあるようなないような。深い闇の海の底を徘徊し、ほんの瞬間覚醒の感覚が意識に過る。それは出来損ないの豆腐に混ざり込んだガラスの粉塵。噛むのも呑むのも御法度。なのに一旦口にしたからは、呑み込む間もなく喉の奥に流れ込む。口蓋を擦り傷だけにし、咽頭弁を奔流の波に翻弄させ……

 語り部は何処に消えた?真っ赤な意識の海で溺れてしまったか? 頭を鈍器でこれでもかとどやしつけたら、暫時くらいは目覚めるか? 眠りの断層。眠りへの渇望。冷たいベッドの上でのメスと柔らかな皮膚との飽くことなき咬合。肉の薄片が淡いピンクの襦袢のように世界とそれとを分け隔てしてる。何処までも悩ましい紅蓮の闇。

 

 (画像は、「紅蓮【初回生産限定盤】 | DOES | ソニーミュージックオフィシャルサイト」より 07/06 17:10)

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