雨の中をひた走る
が、私の醸し出す独特の陰翳の深さのわけは自覚していた。が、口にするわけにいかない。とにかく先へ。疲れ果ててオートバイを停めてしまった。弱気。食堂は白熱灯の橙色の温みに満ちていた。誰もが訳もなく好意的。それが居たたまれない。食堂の経営者夫婦の女将が私の独特な風貌か横顔に惹かれている…じっと見詰めている。ねえ撮影させて……
私は顔を傾けたままだったはずだ。なのになぜ表情が見えたのだろう。ヘルメットだってまだ外していないはず。私は一層俯いた。口元を観られたくなかったのだ。病に爛れた口内。それを知られたくないばかりに顔を伏せているだけなんだ!
そう吐き捨てるように云えたらどんなに。そんな頑なさが翳りの陰翳を深め、女将の撮影の衝動を堪えきれなくさせた。ねえ、撮らせて。いいモデルになるわよ…。そんなわけにはいかない! 私は食堂を出ることにした。誰もが惜しんだ。ずぶ濡れの私のままだった。路上のオートバイに近付くと店に忘れ物があったことに気付いた。ヘルメット? 荷物? 店の中でまごまごしてると、店の若い女子店員がオートバイが邪魔でバスが困ってるわよと。私は慌てた。取るものもとりあえずバイクの元へ…逃げるように。
…気が付くと私は(渋谷)駅の前に。懐かしい人が私の前を行く。慕わしい人。が、雑踏に紛れて行方は分からなくなった。私は余儀なく帰路に付く…が、ターミナル駅の複雑さに途方に暮れる。一体どのホームに立てばいいのだろう。駅員に訊ねる? 列車や電車が次々と。あの電車だろうか。行く先表示板に知ってる地名がある。きっとこれだ。 (10/30 10:18)
[途中から。長い前段があったのだが、トイレに立ってしまって大半は忘れた。二つの夢が交錯したかも。参考にならない拙稿「風雨の中のバイク感覚」「何のために走るのか」 画像は「天気の急変にご用心| バイク輸送・陸送・配送ならBAS」より]
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