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2024/10/16

昼行燈123「家の中まで真っ暗」

  「家の中まで真っ暗

 

 夢: 静かすぎる夜。真夜中だから? 丑三つ時だから? 窓が頑なに閉まっていて雨の気配を消し去っているから? 昨夜は朧な月が南の空に見えていた。曇天になりかけていたのかな。 

 周り中を家々が取り囲んでいる。なのに茶の間のカーテンを開けても町灯り一つ見当たらない。家は北に向いて建っている。南側は一面トタン葺きの壁。仏間の仏壇の脇に出窓があって車道の街灯からの光が漏れ込む。ただ、仏間は襖で閉ざされたまま。縁側が北にも南側にもある。外光はほんの僅かだろうと招き入れようと虎視眈々。だけど締め切られた襖や障子がこそとも柔らかなはずの気配を断ち切っている。

 頼みの綱は茶の間だけだ。が、茶の間の出窓から窺えるのは漆黒の闇。盛って云えば屋敷林に囲まれた過保護な佇まい。防風林でもある杉や松、樅、椿、山茶花、楓たちが片寄あって外光の侵入を防いでいる。しかも、茶の間の隣の台所の戸を開けて10歩も歩けば納屋が構えている。納屋の脇の隙間を立木の枝葉を避けながら歩けばようやく遠からぬ町の家並みや団地の灯りが終夜灯っているのが分かる。ただ、茶の間からは一切の人気と絶縁状態なのである。

 家の中さえ暗い。暗すぎてトイレに向かうにも難儀だ。茶の間を一歩出たら墨を流したというか墨に浸されたというべきか、柱や箪笥や襖や廊下の壁を手探りしながら一歩一歩…摺り足で進まないとならない。父母の生前は玄関にも普段は立ち入らない開かずの間にも豆電球が常夜灯のように、それこそ日中をも問わずに灯したままだった。

 いま一人きりの自分は、頑なに父の真似を敬遠してる。まだそんなことはしたくない。まだ必要はない。そうなったらあとは坂を転げ落ちるように、崖の底に踞ってしまう。しかも一人きりで。土壇場…切羽詰まって身動きが取れない。進みようがない。

 せめて玄関の軒灯りだけでも灯す? 誰も来ないのに勿体ない? 何を惜しんでる? 先がないのに惜しむことなどあるだろうか?

 ということで、センサーライトを家の内外数ヵ所に設置した。これで少しは安心かしら?

 

 (読書メーターにてアップ済 10/16 03:20)

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