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2024/08/26

昼行燈115「ピエロなんだもの」

Pierot_20240826035301  「ピエロなんだもの

 夢が嗚咽のように噴出する。血と汗と涙のように、時も所も弁えず、ただ本能のように剥き出しに。
 ああ、しゃっくりのように止まらない発作。

 真っ直ぐすぎて、魂をも射抜いてしまう衝動。
 目の前にぶら下がっている命。干し柿の真似をしているのか。それとも、いつの日かミイラになることを夢見ている?

 掴みたいんだよ。
 何をって?
 それが分かれば苦労はしない!
 ただ、掴みたいんだ。
 とりあえず真実と答えておく。でも、本当のところ、ボクにも分からない。

 ああ、夢は宙ぶらりん。そこに、そう、浮かんでいる。揺らいでいる。手を出せば、呆気ないほど簡単に掴めるはず。
 けれど、差し出した手をするっと抜け出し、半歩後ろに後退しては舌をペロッと出してボクを嘲笑っている。
 いや、ただ嗤っているだけなのかもしれない。ボクの真剣さが滑稽だって笑い転げているだけなんだろう。
 ボクの直截過ぎる想いが鬱陶し過ぎて、息が詰まるってさ。

 もっと、そう、のびのびと、体を、両手両足を思いっきり伸ばしてね。そうだ、大地にゴロンと寝転がればいいんだ。泥だろうが雑草だろうが、虫けらだろうが体にくっ付いたって平気。
 みーんな仲間なんだもの、ボクを寝床にするがいいんだよ。

 体を開けば、心だって開く。太陽がその恵みを体いっぱいに降り注いでくれる。周りの誰もが君に愛を注ぎたくってうずうずしているのさ。
 ああでも、喉がイガイガする。喉だけじゃない、まるで体中にプラント・オパールが満ちているようだ。神経までがガラス粉に傷ついている。

 身も心も焼き焦がされてしまった。まるで木炭だ。樵小屋に寝そべったら、誰もそれがもとはボクだってこそ、気付いてくれないだろうなー。
 えっ? 誰に焼かれたかって?
 自分さ。誰に焼かれたって記憶がないんだもの、自分で自分を焦がしちゃったって、思うしかないよね。
 ばっかだよねー。でも、ピエロなんだもの、仕方ないのさ。

 

[原作「ピエロなんだもの」(2014/12/25) 画像は、チャンプ作「ホダケリンバートンウイリアムサムグレンマイケル林檎スター」(2014年12月15日)]

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