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2024/07/30

昼行燈107「強迫観念」

Chousinka  「強迫観念

 夢の中にいるに違いない。得体の知れない生き物たちが犇めき蠢いている。命たちがもんどりうっている。命の怒涛が俺に圧し掛かってくる。
 草むしりに日々齷齪してる俺への復讐なのか。日々、際限のない数の生き物たちを踏みつけ掻き削り引き千切っている。俺はただ普通に生きているだけなのに。ただ目障りな雑草を毟り取り、観ただけで、いやその存在の気配を感じ取るだけでぞわぞわさせる微細な虫けらどもを殺虫剤で抹殺を図っているだけなのに。

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2024/07/29

昼行燈106「仕返し」

Taimo   「仕返し

 遠い昔のこと。保育所時代の頃から好きだった彼女。小学生時代も中学生になっても。全く相手にされてないのに、性懲りもなくずっと好きだった。中学校の卒業式の日、とうとう最後の時が訪れた。あの子は、俺の目の前であのやたらとカッコいいアイツに真っすぐ近付いていって、ラブレターらしきものを手渡したのだった。
 ああ、あの子の好きな男の子って、ああいうタイプなのね。
 分かっちゃいたけどさ。

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2024/07/24

昼行燈105「月に吠える」

Mangetu   「月に吠える

 月をジッと眺めあげていると、つい月の面に淡い文様を見出す。煌々と照る月、未だに自ら光るとしか直感的には思えない月、その月は、その表面の文様を見分けることを許すほどには、優しい。
 優しいのだけれど、秋の空の満月は、やはり、凄まじい。空にあんな巨大なものが浮かんでいるなんて、信じられなくなる。ポッカリ、浮いて、どうして落ちてこないのか、不思議でならなくなる。

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昼行燈104「赤茶けた障子紙」

Yakata_20240724024701  「赤茶けた障子紙

 

 肉体的異常があったからといって、ひたすら精神的に打ちのめされ、打ちひしがれ、圧倒され、精神的な闘争に疲労困憊し、困窮し、心が枯渇し、それこそ、草木の一本も生えない荒涼たる、寒々とした光景ばかりがあからさまとなるケースもある。

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2024/07/23

昼行燈103「おしくらまんじゅう」

Oshikura   「おしくらまんじゅう

 

「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」
 冬になると学校では、おしくらまんじゅうで遊ぶ。
 校庭は雪がどっさり降っていて、さすがに遊べなくなっている。
 いつだったか、自衛隊の人たちが来て、ブルドーザーで雪掻きしたことがあるって、近所のおばちゃんに聞いたことがある。そこまでは積もってないみたいだけど。
 ああ、でも、そんな光景、見てみたい。

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2024/07/22

昼行燈102「黴と錆」

Vols_20240723025601   「黴と錆

 

 雨が降っている。
 雨の音がまともに部屋になだれ込む。

 一人きりの部屋。だから、尚のこと、雨音が喧しく聞こえるのかもしれない。

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2024/07/19

昼行燈101「単細胞の海」

Kikuji   「単細胞の海へ

 夢の中に居るに違いない!
 願望なのか悲鳴なのか分からない、声にならない声が喉元に蟠っていた。溜まって腫れあがった浮腫が破裂しそう。膿なのか叫びか喚きの渦が噴出する裂け目を見出せずにいる。

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2024/07/18

昼行燈100「踏切の音」

  「踏切の音

 眩しく広がる空に惹かれて歩き出していった。何処へ行くあてなどない。家の中に籠っているのが億劫になっただけかもしれない。
 外には誰かがいる。何かがある。そんな期待があったのだろうか。
 あまりに遠い昔のことで、ろくすっぽ覚えちゃいない。

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2024/07/16

昼行燈99「迷子」

Kawabe   「迷子

 あれは冒険だったのか、ただ道を誤って、迷っただけだったのか。
 小学2年だったろうか。夏の終わりのとある昼下り、学校から帰り、カバンかバッグを置いて、散歩にでた。遊び仲間は、居なかった。一人きりで出歩くのは初めてじゃなかったけど、ちょっとだけ、違う角で曲がってみた。

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2024/07/14

昼行燈98「「ラヴェンダー・ミスト」断片」

 「「ラヴェンダー・ミスト」断片」

 私はきっと自分だけの楽しみを求めているに違いない。だがそ れが何なのか自分でも分からないでいるのだろう。
 今、目の前に 獲物がある。それをひたすらに追う自分の姿を突き放したような 冷ややかさで見ているのだ。その気持ちの正体が何かは言葉では 表現できるようなものではないと思われた。

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2024/07/10

昼行燈97「私はゴムに 私はコンクリートに」

Yukei   「私はゴムに 私はコンクリートに

 さて、肝心の全身麻酔をされての体験のこと。

 ゼンマをされるのは初めてじゃないのに、麻酔が効いてくる感じがまるで予想と反していた。
 予想といっても、子供の頃の麻酔体験しかないから、その時の状態とは麻酔の効き方が違う! と感じていたのである。

 徐々に意識が遠退いていくとか、そんな感じではなかった。

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2024/07/09

昼行燈96「夜は白みゆくのみ」

53669632_2148027475_227large   「夜は白みゆくのみ

 この部屋を出たかった。出ないことには息が詰まって死んでしまう。
 今度こそ、この部屋を出る! そう決断したことは何度あることか。
 けれど、いざとなると、決心が鈍ってしまう。

 何かが引き止めるのだ。

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2024/07/05

昼行燈95「海月」

Kurage   「海月

 脳味噌がブヨブヨ脳漿の海に浮かんでる。まるでゼリーだ。それどころかクラゲだ。
 クラゲ…水母…海月…闇の海に漂うコンニャク…クラゲなし漂える海の雲…

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2024/07/02

昼行燈94「ヴィスキオ」

Yadorigi   「ヴィスキオ

 飲み会だった。会社の同僚にむりやり誘われてのこと。その強引さに何かたくらみがあると予感していた。
 場所は新宿のビル街の一角にあるお洒落なカフェバー。3階のヴィスキオという看板を確認した。自分じゃ思いもよらない粋な店だ。時間は7時頃。

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2024/07/01

昼行燈93「ハートの風船」

Banksy   「ハートの風船

 庭木の手入れをしていた。外仕事するには絶好の天気で、やるっきゃないと、張り切っていた。
 明日はもう、師走である。が、寒波の襲来の前の、そう、それこそ嵐の前の静けさといった、麗らかな陽気。ほとんど夏場と同じ薄着で作業する。が、案の定だが、三十分も体を動かしたら、体は火照ってきて、汗ばんできた。

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