コムラサキ
「コムラサキ」
ふとコムラサキという名が聞こえた。耳にじゃなく頭の中にでもなく遥か彼方に消え去ったはずの記憶の海…その底からやんわり浮かび上がってきたような。遠い昔に観た遊女の悲劇が蘇ってきたのだろうか。
しどけない赤紫の襦袢姿の彼女の末期の眼。あ、それとも庭先に一瞬垣間見たチョウが今頃になって私を忘れないでと訴えている?
胸の中の靄が蜷局を巻いてやがて真の姿を露にしてくるのかも知れない。
その時をずっとずっと待っていた、そんな気がしてきた。そうだ、そうに違いない。コムラサキを気取った額紫陽花の織り成す幻想に決まってる。
切なくて泣きたくてたまらなかった。こみあげる熱い想いの正体が怖くもあった。怯える心。チョウのように儚く揺れてる。とめどない想い。キリがない。手にしたハサミで全てを断ち切ってしまった。剪定の時は終わったのだ。
(ガクアジサイの色合いからふと小紫を連想。頼みのWikipediaで語義を調べて、幻想風な小文を綴ってみた。 06/17 03:12)
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