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2024/05/28

昼行燈87「円らな瞳」

Kuroneko  「円らな瞳

 夢の中にいることは分かっていた。だから藻掻いていても焦ったりはしない。ただ息苦しいのが困る。息が出来ない。喘ぐような息。気管支が閉塞してる? 肺胞が目詰まりしてる?
 ガキの頃、息してることが不思議でならないことがあった。一瞬、呼吸が止まってしまって、もしかしてこのまま窒息して…なんて心底心配したっけ。肺が自動的に動いている不可思議。意識して吸ったり吐いたり。その繰り返しが何より大切なんじゃないか。自分にはみんなのようにうまくできないんじゃないか…。


 布団が重苦しいのだろうか。というか、そもそも布団など被ったことはない。いつも着の身着のままで寝てる。布団にくるまれてるはずが、気が付いたら布団に雁字搦めになって気が付いたら、どこぞの川にでも放り込まれて…。
 焦ってるわけじゃない。だけど何故か藻掻いている。何かが圧し掛かっている。あまりに似たような夢を繰り返し見るから、そのうち目が覚めると高を括っている。開き直ってる。
 だけど、今夜のはいつもと違う。何か変だ。夢には違いないのだが妙にリアルに苦しい。目は開いているはずなのに、真っ暗闇。闇の中で真っ黒な猫がゆうゆうと歩いていく。こっちのことなど知らん顔だ。どうして漆黒の闇の中で黒猫が見えるのか。陰翳の蠢きが気配となって感じられる?  晦冥(かいめい)の時なのか? 
 助けてくれよ。知らない仲じゃないだろう? 黒猫に救いを希った。
 すると、奴は俺の目をまっすぐに覗き込んでくれた。その円(つぶ)らな瞳が俺を助けてくれた。奴ったら俺の上に乗っかってたんだ!

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