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2024/03/14

昼行燈80「ダダ ダダ ダダ」

Megane   「ダダ ダダ ダダ」

 訳の分からない理屈が頭の中をグルグルしている。先生が何か言ってる。みんなも納得しているようだ。分からないのは自分だけのようだ。
 分かるとか分からないか、その辺りがモヤモヤして考えているうちに頭の中どころか体中がカッカしてきた。恥ずかしさも極まっている。
 どうしたらいいのか分からない。事態がどうなってるのか見えない。

 問題は簡単なことだと、初めは自分でも分かっていた。が、いざやってみたらできないのだ。みんななんであんなにすんなりできるんだろう。
 ボクは懸命になって脳味噌を巡らせている。

 そもそも先生はどうしてボクを立たせるんだろう。机も椅子もあるんだし、座らせてよ。
 そうか、最初はみんな立っていて、できた奴から先に座っていくんだ。で、最後に残ったのはいつものことだけど、ボクってこと。
 大概は三人くらいが常連なんだけど、今日はボク一人。なんだか取り残されたような、仲間外れにされたような、裏切られたような。

 ボクは必死に呟いている。
 ジュウ キュウ ハチ…そこで詰まってしまう。
 そこさえ乗り切ったら、ロク ゴー ヨ… というか5までは行ける。
<ナナ>が云えない。云っているつもりだけど、先生にはダダって聞こえるらしい。

 ダダ ダダ って繰り返してる。ふざけていると思ってる。駄々を捏ねてるって目を吊り上げてボクを睨んでる。茶色なのか橙色なのかのフレームのメガネの女先生。

 ボクは懸命なんだ、必死なんだ、脂汗さえ垂らしてる。顔が火照ってる。真っ赤になってるに違いない。マジなのは分かるだろうに。

 ダダ ダダ ダダ……僕にはナが発音できないんだ。ンもダメ。鼻から息が抜けないからヨンも云えないだろうな。苦労するだろうな。苦し紛れにヨフと、ンの代わりにフと呟いて誤魔化せるだろうか。

 いや、いまはその前に、ダダ ダダ ダダ…。ダダが険しい山。ダダを際限なく繰り返している。チャイムの鳴るのを待ちながらずっと。

[画像は、「メガネフレーム|商品一覧から探す|眼鏡市場(メガネ・めがね)」より] (03/14 04:24)

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