昼行灯76「真夏の夜の訪問者」
屋根裏部屋という狭苦しい空間を奴は散々飛び回った揚げ句いつしかようやく静寂が世界を満たした。それでも胸の鼓動は高鳴ったままだ。窓外の彼方は巨大な闇の湖面。昼間なら稲穂の海なのだが。空には無数の星たち。至上の煌めき。
俺の夢の時空の闖入者はどうした? 窓という脱出口を見付け出した? ふと、夜中の訪問者の正体に気付いた。蝙蝠だ! 舞い飛ぶ時間を間違えたはぐれ者。四囲の壁にはぶつかるのにベッドに横たわる俺には全くかすらなかったのは、俺の熱気を察知してたからだろうか。
いつしか気配は消え去っていた。あるのは俺の息衝く微かな蠢き。やがて俺は上体を起こして窓を閉めた。十分すぎるほど外気を取り入れたことだし。ひんやりしてさえいる。動悸も鎮まってる。未明の夢の時の終焉。
その日のことだったか、数日後だったか、とんでもない事実を知った。屋根裏部屋の片隅の小学生時代の机。滅多に引き出しなど開けたりしない。その引き出しの一つが何故か僅かに開いてる。閉め忘れてた? 閉めようか。でもガキの頃の思い出が仕舞ってあるようでふと気になった、懐かしさもあって、サッと開けてみた。するとそこに骸と成り果てた蝙蝠。 (03/03 13:56)
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