昼行燈66「鬼哭啾愀」
肉も身も削ぎ落とされ、自棄になってしまったのだろうか。
今夜は晴れ渡った月夜。
今夜にも半月になろうという月影が地を睥睨している。
月の表に揺れる影が映っている。
月の兎は、耳が殺がれて淋しそう。
でも、あと数日もすれば、しゃれこうべ(髑髏)どころか上半身が影に埋もれていく。
そうすれば、足腰と臼が残るだけ。黒っぽい煙が虎視眈々と。
月光が地に満ちている。光が地に溢れているのだ。
光の波が潮となって押し寄せ、引いていく。
地の角が光という柔らかな鏨(たがね)に摺られ嬲られている。
気を付けなくっちゃ!
光は魔物だぞ。光は上っ面だぞ。決してお前の理解者なんかじゃない。お前の表面を抉っていくだけなのだぞ。
そうさ、その証拠にお前は今じゃ、露骨なばかりの裸体の極み、骨の連なり、そう、骸骨じゃないか。
鬼哭啾愀(きこくしゅうしゅう)とばかりにシクシク惨めったらしく哭いている。
骸骨は喚き、叫び、祈り、希(こいねが)い、嗤い、平伏する。
ああ、そんなに踊りまくって。硬骨漢のお前には、筋肉はもとより軟骨なんて洒落たものは無縁だろうな。骨身を削って磨り減って、終いには骨の欠片、粉みじんの骨の粉だ。
お前を待つのは、粉骨砕身の挙句の蒼白なる砂漠だ。獅子奮迅ってわけだよ。
[原文は、拙稿「粉骨砕身そして鬼哭啾愀」より。 画像は、鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「骸骨」(画像は、「骸骨 - Wikipedia」より)]
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