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2024/01/15

昼行燈61「蒟蒻問答」

Konnyaku  蒟蒻問答


 蓑虫の真似して秋霜烈日を気取るとは。えっ? 隙間風が酷いんだって? 知ったことか!
 あれは誰に罵倒されたっけか。

 作り損ねた蒟蒻を手にしている感覚があった。蒟蒻は植物としてのコンニャクから毒抜き処理された食品。そう、お前は腑抜け、抜け殻に過ぎない。だから蓑を被って縮こまって風雪を避けてるんだよ、そんな噂を耳にしたことも。

 身が形を成さない。ブヨブヨの体躯。心はもっとふわふわ。何処からともなく宇宙線が飛来してくる。太陽より遥かに遠い果て知れない彼方からだ。無数の放射線が地から飛び交ってくる。天と地との狭間で漂う俺に逃げ場などない。

 何もできないくせに高みの見物を決め込んでいるくせに地の彼方の情勢が気になってならない。掴みどころのない情報がソリトン波となって心身に襲い掛かってくる。よせばいいのに同調したり共振したり。震えが止まらないんだ。体がじゃなく、細胞自体がブルブル震えてる。

 夢の中ですら波動は止まない。音波なのか、それとも電磁波なのか。もしかしたら電子レンジの使い過ぎなのかもしれない。生のものも焼いたものも久しく食べてない。電子レンジは俺の唯一の調理器具。脳味噌も肺腑もマイクロ波に茹ってしまったのか。それなのに夢の中では夕日が山並みに沈む景色ばかりが鮮烈なのは何故なんだ?

 ん? 夕日なのか本当に。朝日ってことはないのか。瞑目して瞼の裏に焼き付いている眺望を思い浮かべても、一体どこの山で観た光景なのか思い出せない。それとも閉じた瞼越しの太陽光、それとも陽光に透かした血潮の深紅なのか。夕焼けか朝焼けか…。朝寝坊の俺のこと、夕焼けに決まってる?

 あの山の彼方に誰がいる? 夢の中からいつか出現することはあるんだろうか。懸命に何かを追い求めてるはずなのに、いつしか漫然たる想念が曖昧の海に漂っている。ああ、漫然と漠然の異同が気になってならない。何処までも支離滅裂の夢。夢は際限なく砕け散る。乾き切る。水気を失って粉塵となっていく。俺の霧はガラス粉。

 

        [画像は、「コンニャク - Wikipedia」より]

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