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2024/01/22

昼行燈62「酔 漢 賦(花名篇)」

Kure 「酔 漢 賦(花名篇)」


 お前の顔、葵じゃないか、もう、降参か。

 てやんでえ、てめえが辛夷(こぶし)を振り上げるからじゃねえ。そういうてめえこそ、青っ花、垂らしやがって。そんなことくらいで、駒草(こまくさ)な顔、すんじゃねえよ。

 汚ねえな、そっちこそ、手鞠花(てまりばな)しやがるじゃねえか。

 おーおー、意地張って、今に赤紫蘇を掻くなよ。アキレア顔しやがって。おめえの顔が薊(あざみ)なったって、誰も何とも思やしねえよ。橙(だいだい)、頑丈な顔なんだから、明日葉(あしたば)直るってことよ。

 何を、おめえこそ、油菊(あぶらぎく)った顔しやがって、甘茶(あまちゃ)ものばっかり喰ってるからだ、油桐(あぶらぎり)しやがれってんだ。

 おおお、おめえ、泡吹(あわぶき)してんじゃねえか、もう、菜種切れか。

 南天(なんてん)言いやがった。オレが蓼(たで)切れなわけ、ねえだろうが。おらあ、これでも、世間じゃ、種漬け花で通ってんだ。

 けっ、あちこちの女郎花(おみなえし)に梯姑(でいこ)付けやがって。

 しかたねえさ、みんな、オレを茉莉花(まつりか)よ。だから、待宵草(まつよいぐさ)や松虫草(まつむしそう)じゃ、可哀想だから馬酔木(あしび)てやってんじゃねえか。

 木通(あけび)た奴だ、お前は。そういや、おめえ、継粉菜(ままこな)ってな。満作(まんさく)尽きたってな。

 おめえ、何処でそれを。

 蝋梅(ろうばい)すんじゃねえ。なんなら、オレが、継子の尻拭いしてやろうじゃねえか。烏薬(うやく)むやにしてやろうか。大丈夫、沈丁花(じんちょうげ)やってやるからよ。

 ところで、お前は、う棕櫚(しゅろ)専門だってな。

 菊(きく)! 胡瓜(きゅうり)、桔梗(ききょう)なこと、言うんじゃねえ。

 どうだ、羊蹄(ぎしぎし)して、いいか? あの子の雛菊(ひなぎく)が、菖蒲(あやめ)て、今じゃ木槿(むくげ)ってえじゃねえか。

 もう、よそう、桐(きり)がねえ。

 そうか、この話は、金糸梅(きんしばい)。


(04/05/03 記。画像は、拙稿「心だけじゃない、ちょっと悲しい現実」より)

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