昼行燈62「酔 漢 賦(花名篇)」
おーおー、意地張って、今に赤紫蘇を掻くなよ。アキレア顔しやがって。おめえの顔が薊(あざみ)なったって、誰も何とも思やしねえよ。橙(だいだい)、頑丈な顔なんだから、明日葉(あしたば)直るってことよ。
何を、おめえこそ、油菊(あぶらぎく)った顔しやがって、甘茶(あまちゃ)ものばっかり喰ってるからだ、油桐(あぶらぎり)しやがれってんだ。
おおお、おめえ、泡吹(あわぶき)してんじゃねえか、もう、菜種切れか。
南天(なんてん)言いやがった。オレが蓼(たで)切れなわけ、ねえだろうが。おらあ、これでも、世間じゃ、種漬け花で通ってんだ。
けっ、あちこちの女郎花(おみなえし)に梯姑(でいこ)付けやがって。
しかたねえさ、みんな、オレを茉莉花(まつりか)よ。だから、待宵草(まつよいぐさ)や松虫草(まつむしそう)じゃ、可哀想だから馬酔木(あしび)てやってんじゃねえか。
木通(あけび)た奴だ、お前は。そういや、おめえ、継粉菜(ままこな)ってな。満作(まんさく)尽きたってな。
おめえ、何処でそれを。
蝋梅(ろうばい)すんじゃねえ。なんなら、オレが、継子の尻拭いしてやろうじゃねえか。烏薬(うやく)むやにしてやろうか。大丈夫、沈丁花(じんちょうげ)やってやるからよ。
ところで、お前は、う棕櫚(しゅろ)専門だってな。
菊(きく)! 胡瓜(きゅうり)、桔梗(ききょう)なこと、言うんじゃねえ。
どうだ、羊蹄(ぎしぎし)して、いいか? あの子の雛菊(ひなぎく)が、菖蒲(あやめ)て、今じゃ木槿(むくげ)ってえじゃねえか。
もう、よそう、桐(きり)がねえ。
そうか、この話は、金糸梅(きんしばい)。
(04/05/03 記。画像は、拙稿「心だけじゃない、ちょっと悲しい現実」より)
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