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2023/11/28

昼行燈42「無間 」

Gaito無間

 夢の中にいるはずだった。なぜなら宇宙空間をゆらゆら漂っているのだから。ん? ゆらゆら? そんな呑気で居ていいのか?

 何処までも落ちていく…それとも際限もない上昇なのか。右も左も、上も下もない。グルグル回っている。メニエル病の日々の再現。あれ以上の猛烈な遠心力が脳味噌の神経細胞の一つ一つを引き裂いている。グリア細胞までが星屑にならんとしている。凍てつくという表現が可笑しいほどに懐かしい。


 絶対零度へと漸近線を描いて近寄っていく。その線上を滑っているのだ。あの白い肌を舐めるように。それとも嘗めるほうがいいか。 夢から覚めたいのだろうか。このまま宇宙という無方向なビッグスライダーに身を任せるのがいいのだろうか。


 回転の中心は何処にあるのか。引力と斥力の基軸は何処にある。


 ポーの落穴と振子に焦がれた昔が懐かしい。神の心臓の鼓動を信じられるのが羨ましくてならなかった。鼓動と拍動の異同に悩んだ若いころの俺が愛おしくてならない。宇宙の時空に身を横たえても氷の微笑すら浮かばない。星屑は冷徹。欺瞞に満ちている。

 物質的恍惚に酔い過ぎたのか。虚無の白熱にロマンを追い求め過ぎたのか。

 灯りのない部屋。緞帳の向こう側を覗きたい。漆黒の舞台から降りたいのだ。夢は続く、無間に。白熱する街灯への郷愁。ああ、なんとちっぽけな孤独なんだろう。星屑など口にする生意気を恥ずかしいと思え!

 

[冒頭の画像は、拙稿「読書拾遺(シェイクスピア・ミステリー)」より]

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