« 昼行燈29「沈黙の宇宙に鳴る音」 | トップページ | 昼行燈31「誕生日に寄せて」 »

2023/11/06

昼行燈30「瑠璃色の光」

Ruri 昼行燈30「瑠璃色の光」

 窓は締め切っている。なのに、風が唸るように鳴っている。
 窓外の葉っぱの散り果てんとしている木々が悲鳴をあげてるのか。木立の間を駆け抜ける風が快哉をあげてるのか。
 木々や荒れ地の草を行方を阻む邪魔者とばかりに薙ぎ倒さんとしているのか。舞い上がる枯れ葉は衣擦れの音符となって踊り狂っている。


 プネウマこそが地にあっての命であり世を統べる力そのものと告げているのか。
 それとも……
 それとも、そうスピリットを忘れんと息も絶え絶えの俺に救いの手を差し伸べんという天の配剤、唸りなんかじゃない魂への囁きなのか。
 心が萎えている? 声が掠れている? 命が風前の灯火じゃないかって?
 だったら泉は何処にある。風に吹き飛ばされたなら、熱い命の源泉に導かれるとでも?


 閉じ籠ってなんかしてちゃいけないのだろう。大いなる天の声に耳を傾けるべきなのだろう。
 耳を塞いでしまっていたのか。裸の身に自然の声を、問い掛けを受けるべきなのか。
 怯え切った俺。繭の中の俺? 蓑虫の俺があの枯れ枝にしがみついてる?


 ああ、俺に云わせれば、俺は気が付いた時には赤い闇のドツボで足掻いていたんだ。球体の内側を這い回っていたんだ。出口なし。
 それでも、穴倉を這い出て日の射す世界にやっとのことで首を出した。


 眩しい光に目が眩んだ。違う! 瑠璃色に輝く光の矢は情け容赦なく瞼という蓋をも刺し貫いた。命辛々瀕死の肉塊。それでも風の囁きに付き随おうとした。
 もう後戻りは利かない。赤い闇の宇宙で晒し者の俺なんだ。

                     (11/05 03:48)

 

(画像は、「コバルトガラスを通して観察したナトリウムの炎色反応。」)

|

« 昼行燈29「沈黙の宇宙に鳴る音」 | トップページ | 昼行燈31「誕生日に寄せて」 »

音楽」カテゴリの記事

心と体」カテゴリの記事

妄想的エッセイ」カテゴリの記事

創作(断片)」カテゴリの記事

ナンセンス」カテゴリの記事

ジェネシス」カテゴリの記事

あの日から始まっていた」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 昼行燈29「沈黙の宇宙に鳴る音」 | トップページ | 昼行燈31「誕生日に寄せて」 »