昼行燈40「縫合」
逢う。逢わないとならない。だが、誰に。何処に誰がいる。方向感覚がまるで鈍ってる。四方八方どころか上下感覚も狂ってる。中空に漂っているのだろう。息は出来ているか。
逢いたい人、逢ってくれる人は橋の向こうにいる。訳も分からず、ただそんな根拠のない思いが渦巻いていた。
橋の向こう側? 一体、何処に橋がある。神通川か常願寺川か、白岩川か。
それともただの用水路のことか。縦横に巡る農業用水を辿っていけとでも。
見えているはずの目。なのに、観ることに怯えてる。怖いのか。何が怖い。何が襲ってくる?
そもそもお前を追ってくる奴なんて幻想じゃないのか。あまりに孤独で淋しくて、窮迫する胸をありもしない夢で埋めているだけじゃないのか。
点在する誰か。あの女の無数の影。いつでも行く手には現れる。だったら何処へ行く必要もないってことにならないか。ここに蹲っていたって同じことじゃないか。灼けたトタン屋根の上でジュージュー焼き焦げているのが居たたまれないだけ?
目覚めた瞬間から亡霊。肉体とは乾いた魂を覆う歪んだ袋。
ああ、淋しくてならない。この淋しさは臆病なる心の成れの果て。傷つくことを過剰に恐れたツケを払わされている。何を怯えている? 遠い昔の磔された屈辱? 橋の向こう側に渡り切ったら、あの解剖台の上での、ミシンと蝙蝠傘との偶発的な出会いのように美しい出会いが待っているのだろうか。縫合の時は近い?
[創作。画像は、「ダンテ【神曲】まとめ(17)〜「煉獄篇」第13歌・第14歌・第15歌 - xアタノールx」より。「解剖台上のミシンと傘の偶然の出会いは美しいのか」や「ロートレアモン伯爵 - Wikipedia」参照。]
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