昼行燈(番外)
星々は何も語らず、ただ天にあり、地にある。
天の底、地の果てにあって、輝きを放ち続けている。
無辺大の凍て付く時空を光で満たそうと、懸命の、しかし儚い試みを続けている。
窓辺でボクは星たちを眺めている。
手を差し伸べても、窓枠をほんの少し食み出すだけ。
星の煌めきがボクの瞳を心を射抜いている。刺し貫いて、ボクを居たたまれないほどに戸惑わせる。
ボクは居ても立っても居られない。じりじりする想いが沸き立っている。
ついさっきの夜中の冒険。屋根裏部屋から這い出、屋根瓦を這い蹲って、昼間、こっそり掛けておいた木の梯子を伝って外へ、遠い世界へ旅をしてきたんだ。
真夏の夜の小さな冒険。
やぶ蚊と蛙の鳴き声と、カラスか何か鳥の喚き声だけがボクの連れだった。
月は雲に隠れていて、灯りのない田舎道を歩くのは難儀だった。怖かった。星々だけが冷徹なほどに暖かくボクを見下ろしていた。
(拙稿「星だけが知っている」より)
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 雨の中をひた走る(2024.10.31)
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
「ディープ・スペース」カテゴリの記事
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
- 昼行燈115「ピエロなんだもの」(2024.08.26)
- 昼行燈111「長崎幻想」(2024.08.09)
- 昼行燈109「日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル」(2024.08.06)
「旧稿を温めます」カテゴリの記事
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈117「夏の終わりの雨」(2024.09.04)
- 昼行燈116「遠足」(2024.08.27)
- 昼行燈114「二つの影」(2024.08.20)
- 昼行燈112「サナギ」(2024.08.12)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- 昼行燈121「お萩の乱」(2024.09.20)
- 昼行燈120「小望月(こもちづき)」(2024.09.17)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
「ジェネシス」カテゴリの記事
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
- 昼行燈115「ピエロなんだもの」(2024.08.26)
- 昼行燈112「サナギ」(2024.08.12)
- 昼行燈111「長崎幻想」(2024.08.09)
「あの日から始まっていた」カテゴリの記事
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
- 昼行燈117「夏の終わりの雨」(2024.09.04)
- 昼行燈115「ピエロなんだもの」(2024.08.26)
コメント