昼行燈12
そうだ、俺は無様な姿を晒したくなくて何処かの生け垣の陰に倒れ込んでしまったんだ。道端に行き倒れるはずが、深碧(しんぺき)の緑に逃げ込むなんて、こんな時に臆病な根性が邪魔をする。どこまで卑屈なんだ。
血反吐が競り上がってくる。吐き出したい。けれど、喉の奥に蓋がされてるみたいで、喉元がやたらと腫れていくばかり。息ができない。
針で桑の実色に染まった喉を突き刺したい。きっとマグマが噴き出すに違いない。それともヘドロのように、躑躅色(つつじいろ)の膿のように溢れ出てだらしなく垂れていくだけなのか。
真昼間なのに臙脂色(えんじいろ)の闇が分厚く俺を覆っている。それとも俺の体が燃え上がっているのか。熱い! 赤紅(あかべに)色の魂が憤怒のあまり燃え尽きようとしている。
魂の亡骸が玄妙な闇の一点に凝縮してしまった。痣? 黒子?
なんだかやたらと滑稽だ。嗤いたくなるほど悲しい。漆黒の闇が恋しいなんて愚かな奴だ。天空の星を睥睨したくなる。違う! この世の凝視を堪えられなくて逃げ腰になってるだけだ。真昼間に星に懇願するなんて俺らしい。
お前なんて、鬱勃の闇に消え果ればいいんだ。曝け出すがいいんだ。ああ、誰だったろう。闇から生まれた最初の色が青だなんて。俺は青になりたい。
(画像は、「月 - Wikipedia」よりより)
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 明けない夜に(2025.03.20)
- 昼行燈126「眼差しという匕首」(2025.03.16)
- 孤独を託つ宇宙(2025.02.02)
- われは海の子(2025.02.03)
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
「ディープ・スペース」カテゴリの記事
- 明けない夜に(2025.03.20)
- 昼行燈126「眼差しという匕首」(2025.03.16)
- 孤独を託つ宇宙(2025.02.02)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
「駄文・駄洒落・雑記」カテゴリの記事
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 雨の中をひた走る(2024.10.31)
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- ローンライダー(2024.10.02)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- 昼行燈126「眼差しという匕首」(2025.03.16)
- 孤独を託つ宇宙(2025.02.02)
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- 昼行燈121「お萩の乱」(2024.09.20)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- 明けない夜に(2025.03.20)
- われは海の子(2025.02.03)
- 宇宙を彷徨い続ける(2025.01.14)
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
「ジェネシス」カテゴリの記事
- 孤独を託つ宇宙(2025.02.02)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
- 昼行燈115「ピエロなんだもの」(2024.08.26)
- 昼行燈112「サナギ」(2024.08.12)
「あの日から始まっていた」カテゴリの記事
- 明けない夜に(2025.03.20)
- 昼行燈126「眼差しという匕首」(2025.03.16)
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
コメント