昼行燈12
そうだ、俺は無様な姿を晒したくなくて何処かの生け垣の陰に倒れ込んでしまったんだ。道端に行き倒れるはずが、深碧(しんぺき)の緑に逃げ込むなんて、こんな時に臆病な根性が邪魔をする。どこまで卑屈なんだ。
血反吐が競り上がってくる。吐き出したい。けれど、喉の奥に蓋がされてるみたいで、喉元がやたらと腫れていくばかり。息ができない。
針で桑の実色に染まった喉を突き刺したい。きっとマグマが噴き出すに違いない。それともヘドロのように、躑躅色(つつじいろ)の膿のように溢れ出てだらしなく垂れていくだけなのか。
真昼間なのに臙脂色(えんじいろ)の闇が分厚く俺を覆っている。それとも俺の体が燃え上がっているのか。熱い! 赤紅(あかべに)色の魂が憤怒のあまり燃え尽きようとしている。
魂の亡骸が玄妙な闇の一点に凝縮してしまった。痣? 黒子?
なんだかやたらと滑稽だ。嗤いたくなるほど悲しい。漆黒の闇が恋しいなんて愚かな奴だ。天空の星を睥睨したくなる。違う! この世の凝視を堪えられなくて逃げ腰になってるだけだ。真昼間に星に懇願するなんて俺らしい。
お前なんて、鬱勃の闇に消え果ればいいんだ。曝け出すがいいんだ。ああ、誰だったろう。闇から生まれた最初の色が青だなんて。俺は青になりたい。
(画像は、「月 - Wikipedia」よりより)
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