昼行燈
まっさらな空間。何もない? 茫漠たる気分。浮いてる? 漂ってる? 何処に? 掴みどころのない時空。何もないというのは本当? なのに体は火照っている。火照るどころじゃない、燃えるようだ。鉛のように凝り固まっているのに、熱いのは何故だ? 削れば金属の粉がボロボロ零れるに違いない。
動けない。脳味噌までが干上がってる。数十年物の梅干しだ。カラカラの大地。しゃれこうべが嗤っている。空っ風に吹かれて嚙み合わない上下の歯列がカタカタ鳴ってる。眼窩からの熱風が口蓋を抜けられずに蜷局を巻いてる。
眠れなかった夜が明けた。放置された躯のようなそれが放心してる。世界は動いている。生きている。だったらそれだって動いていいはずだ。電源の通じない筐体が横目で窓の辺りを眺めている。カーテンの隙間から漏れる光は、紛れもなく朝を告げている。
体の芯が蠢いている。まだ生きているのか? まだ生きないといけないのか。火を噴く蒼白の時。地の底から湧き上がるマグマを希う。闇の世界に居るわけじゃないのに、のっぺらぼうの奴の手触りが何処からともなく伝わってくる。
赤い闇? 肉の闇? 血肉の悲鳴? 何があるのか。何もないとは何がないのか。悲鳴は無の時空をあてどもなく彷徨っていく。散々血迷った挙句深紅の闇に吞み込まれていく。
いつものことだ。いつもの朝だ。今日も又一日を掛けて命を賦活させないといけない。生きていると見せかけないといけない。鉛の体を引き摺って昼行燈の日をやり過ごす。今日の日暮れ頃には目覚めるだろうか。 (09/14 19:31)
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