昼行燈3
粉塗れ。昨日すれ違ったミラコレパウダー塗りまくりの女の顔面。いや今の俺は全身がボディパウダーに覆われてる。それとも防腐剤混じりの布に包まれる。目が明かない。口が開けられない。埒が明かない。
やがて純白の粉塵は微かに正体を現してきた。それは砂だ。きっと砂の女の呪いだ。砂の女の怨念の礫だ。今になって俺に襲い掛かっている。
だがそれも勘違いに過ぎなかった。俺の中の茫漠たる空虚が現実を希っての空想だ。礫が叩くほどの現実を欲している。
粉塵は実は俺の成れの果てだ。四次元時空に迷い込んだそれが寸刻の夢を奏でたに過ぎない。
肉体が崩壊していく。血肉が骨が粉微塵になる。口腔に吹き荒れる絶命の吐息。乾き切った脂が渦を巻き、粉砕された内臓が蜷局を巻いてミンチになって吐き出されてる。
夢に違いないのだ。ただ目覚めてくれないのが困る。
明けない夜。暮れない時。際限のない転落。転がった先の沼地さえ今は干上がっている。何処かにそれは留まるだろうか。それともローリングストーンのまま陽は上がるのだろうか。
それの中の命は消えてない。魂は潰え去っても負のエネルギーが瞋恚(しんに)と化して、そう這い蹲ってでもこの蒼白の世界を彷徨うだろう。
そう、旅は始まったばかりなのだから。
(画像は、拙稿「つがいのスズメが内庭に」より 09/19 23:35)
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 昼行燈44「止まっちゃいけない」(2023.12.04)
- 昼行燈43「お地蔵さんは黙っている」(2023.12.03)
- 昼行燈(番外2「音という奇跡」)(2023.11.29)
- 昼行燈42「無間 」(2023.11.28)
- 昼行燈41「 ダストシュート」(2023.11.27)
「小説(幻想モノ)」カテゴリの記事
- 昼行燈3(2023.09.19)
- 昼行燈(2023.09.14)
- 罅割れのガラス窓(2022.10.09)
- あの日から始まっていた (11 赤いシーラカンス)(2021.09.16)
- あの日から始まっていた (8 睡魔)(2021.09.08)
「駄文・駄洒落・雑記」カテゴリの記事
- 昼行燈36「糸が切れた」(2023.11.16)
- 昼行燈26「森の雨音」(2023.11.01)
- 昼行燈25「点々は 宇宙を攪拌しないのです」(2023.10.31)
- 昼行燈15(2023.10.16)
- 昼行燈14(2023.10.13)
「妄想的エッセイ」カテゴリの記事
- 昼行燈43「お地蔵さんは黙っている」(2023.12.03)
- 昼行燈(番外2「音という奇跡」)(2023.11.29)
- 昼行燈41「 ダストシュート」(2023.11.27)
- 昼行燈39「 廃墟」(2023.11.22)
- 昼行燈34「オワンクラゲ」(2023.11.14)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- 昼行燈44「止まっちゃいけない」(2023.12.04)
- 昼行燈42「無間 」(2023.11.28)
- 昼行燈41「 ダストシュート」(2023.11.27)
- 昼行燈40「縫合」(2023.11.23)
- 昼行燈39「 廃墟」(2023.11.22)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- 昼行燈44「止まっちゃいけない」(2023.12.04)
- 昼行燈(番外2「音という奇跡」)(2023.11.29)
- 昼行燈42「無間 」(2023.11.28)
- 昼行燈41「 ダストシュート」(2023.11.27)
- 昼行燈40「縫合」(2023.11.23)
「あの日から始まっていた」カテゴリの記事
- 昼行燈43「お地蔵さんは黙っている」(2023.12.03)
- 昼行燈(番外2「音という奇跡」)(2023.11.29)
- 昼行燈42「無間 」(2023.11.28)
- 昼行燈41「 ダストシュート」(2023.11.27)
- 昼行燈40「縫合」(2023.11.23)
コメント