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2022/10/10

青い空、白い雲

Sirai-2  泥水を啜ってる。黴臭い壁を這い伝ってる。分厚い曇りガラスの窓の外は晴れているようだ。

 ん? 俺は今、何処にいる。青空の下を歩いてるんじゃなかったか。燃え上がる闇の一夜を命からがらやり過ごして、お袋に起こされて、目覚めた振りをして、味のない香りもない食事を済ませ、いつものように学校へ。

 青い空、白い雲。だが、俺には空はない。垂れ込める雲、それとも血の滲む皮膚越しの爽やかな風を嗅ぎ取っている。今にも倒れ込みたい。その場に突っ伏して寝入りたい。いつものようにガンガン壁を叩く真っ赤な闇夜を忘れ去りたい。

 隣の兄貴に話しかける。それはうっかりすると気を失いがちな俺の必死の足掻き。タールのような海の波に溺れ込まないよう、海の泡を拾い集めては口にしている。意味などない。そう、泡がごぼごぼ云っているだけ。

 さぞ、お喋りな軽薄野郎と思われるんだろう。でも、仕方ないんだよ、生きるためなんだもの。

[「青い空 白い雲: 」(壺中山紫庵)より。画像は、建築家白井晟一画]

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