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2022/10/25

観る前に飛ぶんだ

Segan  沈黙の宇宙。闇の奥に佇む湖の誘惑。眠りに陥る寸前の恐怖に似た感情の委縮。

 何を怖れて居る。溺れる苦しみ? 何を今さら。あるのは真っ赤な、それこそ燃え上がる炎の揺らめきに過ぎないのだ。際限のないぬめぬめした壁面の洞窟を潜り抜ければ、待っているのはお前の夢の躯。

 ガラスの粉塵のような惨状に、どう凝視しても躯には見えないだろう。思い切って寝転んでみることだ。全身にラメのような輝きにのたうち回るに違いない。睡魔の奴の高笑いが聞こえるだろうぜ。

 そう、お前に熟睡など許されていない。耳元で、それとも脳髄の中で銅鑼の音が鳴り響いてやまない。肉の身のはずが、粉砕されたコンクリートの瓦礫の、あの味も素っ気もない震撼とした牢獄の沈黙に呻くだけ。

 格子の隙間からは何が見える? そうか、相変らずの沈黙の闇か。お前の成長のなさも病膏肓だな。

 さあ、一緒に飛び降りようぜ。手に手を取って、飛び込むんでやるよ。観る前に飛ぶんだ。崖下へ。宇宙へ。

 

[トップ画像は、イタリアの画家ジョヴァンニ・セガンティーニが1894年に描いた絵画『悪しき母たち』フィリップ・ジュリアン著の「世紀末の夢―象徴派芸術」にてこの絵を知った]

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