観る前に飛ぶんだ
ガラスの粉塵のような惨状に、どう凝視しても躯には見えないだろう。思い切って寝転んでみることだ。全身にラメのような輝きにのたうち回るに違いない。睡魔の奴の高笑いが聞こえるだろうぜ。
そう、お前に熟睡など許されていない。耳元で、それとも脳髄の中で銅鑼の音が鳴り響いてやまない。肉の身のはずが、粉砕されたコンクリートの瓦礫の、あの味も素っ気もない震撼とした牢獄の沈黙に呻くだけ。
格子の隙間からは何が見える? そうか、相変らずの沈黙の闇か。お前の成長のなさも病膏肓だな。
さあ、一緒に飛び降りようぜ。手に手を取って、飛び込むんでやるよ。観る前に飛ぶんだ。崖下へ。宇宙へ。
[トップ画像は、イタリアの画家ジョヴァンニ・セガンティーニが1894年に描いた絵画『悪しき母たち』フィリップ・ジュリアン著の「世紀末の夢―象徴派芸術」にてこの絵を知った]
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