野良猫の怪…源五郎の夏
[源五郎の夏]
夕方、シャワーを浴び、扇風機の風で火照った体を癒していたら、不意に虫が飛び込んできた。真黒な大きめの虫。羽音がブーンと。虻か熊蜂か。そのうち、奴は正体を現した。なーんだ、源五郎(正確な名称不明。仮称である。昔、そんな名の昆虫がいたような)だ。光沢のあるボディが美しい。図体がデッカイ。我が茶の間を飛び回る。奴も出口を失って、正体を失っているのか。吾輩の方が冷静になった。
最初、熊蜂かと恐れた瞬間、吾輩は慌ててポロシャツを羽織った。裸だったのだ。刺されては一大事。今は病院だって逼迫してる。ハチに刺されたくらいじゃ、相手にされないかも。だが、奴の正体が分かってからは、奴の終章狼狽ぶりを高みの見物。そのうち、どうしたことか、奴は吾輩の腰もとに止まったではないか。よりによって眼下に止まる。
我輩だからいいようなもの。虫嫌いなら叩き潰されるかも。しかし、我輩も、虫にまで存在感を疑われるのは本意ではない。指で弾き飛ばした。奴は何処へ行ったやら。行方不明。無事でいろよ!
[後日談:翌日、深夜に休憩のため書斎から茶の間へ。真っ暗な部屋で奴はまったりしていたが、突然の人の気配に驚いたのか、闇の中、逃げ惑った挙句、食卓の脇のサイドテーブル(物置)の下に逃げ込みやがった。不意打ちだったようだ。それ以降は見かけていない。]
[野良猫の怪]
虫の話題を呟いたので、生き物繋がりで、猫の話を(あるいは猫の話ではないかもしれない)。茶の間の窓から納屋が見える。その納屋に謎の出来事が続いていた。それは、納屋の出入り口が何故か勝手に開いてるのだ。庭仕事が終わったら、戸は締める。一人暮らしなので、戸締りは厳格。
でも、坊主もドジするとか。我輩だって戸を閉め忘れることもあろうさ。だが、何故か納屋の戸が幅15センチほど、開いているという異変が何度も続いた。最初は、誰かが我が家にやってきた証拠に戸を開けたとも考えたが、やや無理がある。
何度も繰り返されると、不気味である。もしかして猫が勝手に出入りしているのか。納屋の中が居心地がいいと、夜の塒にしているとか。野良猫なのか、誰か飼い主が居るのか分からない。焦げ茶色の割腹の言いネコ。栄養はたっぷりのようだ。
大人しい吾輩だが、さすがに納屋とはいえ、毎度毎度15センチほど空きっ放しには腹が据えかねる。戸をしっかり締めるだけじゃなく、つっかい棒をした。これで、猫の奴も悪戯はできないだろう。…猫が犯人かどうか、分からない。開ける…出入りする瞬間を観たことがないのだ。
実は、話はここからなのである。つっかい棒をした、その夜のこと。寝床でふと、考えた。もしや納屋の中に猫が…。戸が開かない納屋で悩んでいる…。戸をどんなにガリガリ爪でひっかいてもあかないと、すねている。すねているだけじゃなく、そのうち餓えて…。
そう、納屋の戸に棒で抑えた際、猫が中にいるかどうかは確かめなかった。もしかしたら猫が中に居たのではないか。不意に戸が閉まっても、いつものことと、高をくくっていたが、いざ、戸を開けようとしても、いつもとは違う…。奴は焦った、そのうち力尽き、植えて、あとは想像したくない。
我輩に勇気の二文字はない! 真実を確かめる勇気など持ち合わせない。悶々と悩むこと二日目の、今日の午前。なんと書斎の窓外を例の猫の奴が悠々と通り過ぎていくではないか! 吾輩の心配は杞憂に終わった。
だが、である。まだ心配はある。戸は何故に何度も15センチほど開くのか。奴以外に猫か何かの動物がいて、あの納屋を塒にしている可能性が皆無ではない。やはり、いつかは納屋の中をしっかり覗いてみるしかないのか。
真相は藪の中……納屋の中。
[原文:「真相は藪……納屋の中」]
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