あの日から始まっていた (34 海辺の戯れ)
口を突いて出る言葉は、吐き出す呻き。
デコボコの言葉の塊は空気を揺らす。
揺れる空気は言葉をあっさり呑み込んでしまう。
大気はネズミを丸呑みする蟒蛇(うわばみ)。
自らをも溶かしつくす胃液で言の葉を優しく嬲る。
粘液と化した葉っぱは樹液のように、海を渡る風に舞う。
飛び散って、そこらじゅうの生き物をベタベタに汚す。
もう、言の葉の主の片鱗もない。
あるのは、雲散する悲しみと凝固する本能。
明るい晴れ渡った空と、木陰に投げ捨てられ湿気た吸殻とが、風の中での出合いを希(こいねが)っている。
分厚い空気が煙幕となるはずだ。
誰からの目線をも阻み、いつの日かの婚姻を静かに待ち続ける。
ボクは一歩一歩、前へ進む。
水辺の戯れを夢見て。
吐き出された言の葉の残骸たちが、断片たちがボクを迎えてくれるはずだ。
この辺りは、ボクの言の葉の切れっ端で満ち溢れている。
言うなれば、脂塗れの湿地こそボクの領地なのだ。
その日のためにこそ、ボクは天に唾するごとく言葉の蠕動を続けてきたのだ。
[拙稿「水辺の戯れ」(2012/09/17)より。冒頭の画像は、拙稿「あの世の沙汰もカネ次第?」(2007/04/07)より]
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