あの日から始まっていた (34 海辺の戯れ)
口を突いて出る言葉は、吐き出す呻き。
デコボコの言葉の塊は空気を揺らす。
揺れる空気は言葉をあっさり呑み込んでしまう。
大気はネズミを丸呑みする蟒蛇(うわばみ)。
自らをも溶かしつくす胃液で言の葉を優しく嬲る。
粘液と化した葉っぱは樹液のように、海を渡る風に舞う。
飛び散って、そこらじゅうの生き物をベタベタに汚す。
もう、言の葉の主の片鱗もない。
あるのは、雲散する悲しみと凝固する本能。
明るい晴れ渡った空と、木陰に投げ捨てられ湿気た吸殻とが、風の中での出合いを希(こいねが)っている。
分厚い空気が煙幕となるはずだ。
誰からの目線をも阻み、いつの日かの婚姻を静かに待ち続ける。
ボクは一歩一歩、前へ進む。
水辺の戯れを夢見て。
吐き出された言の葉の残骸たちが、断片たちがボクを迎えてくれるはずだ。
この辺りは、ボクの言の葉の切れっ端で満ち溢れている。
言うなれば、脂塗れの湿地こそボクの領地なのだ。
その日のためにこそ、ボクは天に唾するごとく言葉の蠕動を続けてきたのだ。
[拙稿「水辺の戯れ」(2012/09/17)より。冒頭の画像は、拙稿「あの世の沙汰もカネ次第?」(2007/04/07)より]
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- バス? 電話ボックス?(2023.04.04)
- 来るな!(2023.03.03)
- 闇の闖入者?(2023.02.16)
- ノートルダムの深淵?(2023.02.15)
- 宇宙を舞う二人を追う…(2023.02.13)
「詩作・作詞」カテゴリの記事
- あの日から始まっていた (34 海辺の戯れ)(2022.01.21)
- 永遠と一瞬の美しき目合ひ(2016.07.02)
- シャボン玉飛ばそ(2015.07.04)
- 氷の町(2015.02.03)
- ピエロなんだもの(2014.12.26)
「旧稿を温めます」カテゴリの記事
- あの日から始まっていた (39 独りきりの祝祭)(2022.03.11)
- あの日から始まっていた (38 孤独な配達人の独り言)(2022.02.25)
- あの日から始まっていた (37 南天の実に血の雫かと訊ねけり)(2022.02.21)
- あの日から始まっていた (36 「祈り」を巡って)(2022.01.29)
- あの日から始まっていた (35 葬送のこと)(2022.01.21)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- 来るな!(2023.03.03)
- 闇の闖入者?(2023.02.16)
- ノートルダムの深淵?(2023.02.15)
- 宇宙を舞う二人を追う…(2023.02.13)
- なにがゆえの悪夢だった?(2023.02.09)
「ジェネシス」カテゴリの記事
- 海月為す(2022.12.22)
- あの日から始まっていた (35 葬送のこと)(2022.01.21)
- あの日から始まっていた (34 海辺の戯れ)(2022.01.21)
- あの日から始まっていた (31 凍てつく宇宙に鳴る音楽)(2022.01.18)
- あの日から始まっていた (16 麻酔は未だ効いてない)(2021.10.06)
「あの日から始まっていた」カテゴリの記事
- 観る前に飛ぶんだ(2022.10.25)
- あの日から始まっていた (39 独りきりの祝祭)(2022.03.11)
- あの日から始まっていた (37 南天の実に血の雫かと訊ねけり)(2022.02.21)
- あの日から始まっていた (36 「祈り」を巡って)(2022.01.29)
- あの日から始まっていた (35 葬送のこと)(2022.01.21)
コメント