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2021/11/26

あの日から始まっていた (30 美は醜の滾りより)

Pierot ← 小林たかゆき作品 (「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」参照。「君はピエロ 僕もピエロ」より)

美は醜の滾りより

 美は常に一旦、描かれ示されると、その瞬間から古典になる。昇格されるのか棚上げなのか分からないが、人間はどんな美であっても満足ができないのが宿命らしい。
 この世は美を嘲笑うかのような醜に満ち満ちている。醜の海に美は島として浮んでいるともいえるのかもしれない(決して大陸ではない!)。
 且つ、人間は美に惹かれ美を是としながらも醜に一層、惹かれて行く。醜の海の波は美という島の海岸線を容赦なく波打っている。津波さえ折に触れ襲い来る。
 美の島で安閑としていたいと思っていても、気がついたなら足元まで醜の誘惑の手が、波がひたひたと押し寄せている。

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2021/11/17

あの日から始まっていた (29 シラミの部屋)

Liceシラミの部屋

 

 この部屋を出たかった。出ないことには息が詰まって死んでしまう。
 今度こそ、この部屋を出る! そう決断したことは何度あることか。
 けれど、いざとなると、決心が鈍ってしまう。

 

 

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2021/11/08

あの日から始まっていた (* 番外編)

Pla  「あの日から始まっていなかった


 ぬたが好きである。食べ物のぬたではあく、ぬたという言葉が好きなのだ。ぬたはぬめった感じからして何処かぬめりに通じるところがある。あくまで語感の上での連想に過ぎない。郷土料理として愛している方たちには申し訳ない。吾輩も好きである。
 ぬめりからしてヒルやナメクジ、ミミズなどを連想する。殻を忘れたカタツムリとか。これらは決して仲間なんかじゃないが、似た者同士の輪に加えたくなる。

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2021/11/07

あの日から始まっていた (28 ディープブルー)

ディープブルー

 

 夢の中にいる。夢だと分かっている。間違いなく夢に違いないのだ。そんな世界がありえるはずがないし。
 でも、この世界から抜け出せない。上も下も右も左も、どっちを向いても、水である。水に浸されている。口を固く閉じているつもりだけど、つい油断して口を開けてしまう。すると、口の中に水が浸入してくる。水が口中だけじゃなく、喉にまで入り込み、内臓をも水浸しにしてしまう。

 

 喉に入った水は、容赦なく気管支に流れ込み、肺にも入り込んで、肺胞を水攻撃し、水鉄砲で突っつき始め、ついには、無数に分枝したその末端にある肺胞の一個一個が肺の本体から剥がれ落ち、気が付けば、ブクブク上がる水の泡どもと紛れてしまって、もう、水の泡なのか肺胞だったのかの区別も付かない。

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2021/11/06

あの日から始まっていた (27 ぬめり)

         「ぬめり

 何かがぬめっている。粘着く闇の中でぬめっている何かがある。ぬた? いや違う。
 排水溝のぬめりだろうか。酔っぱらった魚の腹なのだろうか。それとも、イカのぬめり?
 梶井基次郎が好きなあの滑りだろうか。奴は光まで滑ってると喝破していた。いや違う、奴は光が鼻っ面を滑ったと言っただけだ。あと一歩だったんだ。もう一歩で辿り着けていたのに、滑ってしまった。

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2021/11/05

あの日から始まっていた (26 古ぼけた障子紙)

Yakata

         「古ぼけた障子紙

 


 頭の中の何処かに異常があったからといって、ひたすら精神的に打ちのめされ、打ちひしがれ、圧倒され、精神的な闘争に疲労困憊し、困窮し、心が枯渇し、それこそ、草木の一本も生えない荒涼たる、寒々とした光景ばかりがあからさまとなるケースもある。

 癲癇(などの精神的な病)を抱えることと、精神的な荒廃、あるいはその位相的には逆にあるかのような創造性とは、決して直結しない。心の病を抱えている、だから、心が荒廃した、とも説明できるし、心の病を抱えている、だから、彼はその病を活かして彼特有の世界を探究し表現したとも、そのどちらとも、言える。

 

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