タールの彼方
創作だろうか声にならない呟きだろうか:
まだるっこしい。粘りつく何か。纏わりつく細い腕。波の音が体をなぶる。潮の香が鼻腔を貫く。真っ赤な闇が瞼を焦がす。中空に漂っている。白い脚が波打つ髪のように絡み付いている。あっさりと溺れてしまいたい。半端に慰撫するんじゃない。蜜の味の舌が体を這う。歯噛みするそれ。ああ、私は何処にいる? お前は誰? 際限のない愛撫が回転する螺旋階段に抉られている。目覚めはまだか。出口はないのか。
へどろが口内を満たしている。黒い血と褐色の唾液が入り交じった甘露の嘆き。咽頭弁が嗤ってる。下鼻甲介の震えは絶妙のハーモニーだ。アモンティラードの渦が私を招いている。潜ってこいよと甘い誘惑の笑みを浮かべてる。眼窩に凍てついた涙の結晶は切っ先となって貴方を刺す。ああ、それだよ、それこそ待ち望んでいた出口なんだ。
違った。全くの勘違いだった。あれは黒檀。違う、タールだ、アスファルトだ、塗り込めている。封じ込めている。大気を遮断している。ダメだよ。息が出来なくなるじゃないか。壁に押し潰されるよ。世界が彼方だ。
感覚が感性が摩耗する日々の始まり。
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