タールの彼方
創作だろうか声にならない呟きだろうか:
まだるっこしい。粘りつく何か。纏わりつく細い腕。波の音が体をなぶる。潮の香が鼻腔を貫く。真っ赤な闇が瞼を焦がす。中空に漂っている。白い脚が波打つ髪のように絡み付いている。あっさりと溺れてしまいたい。半端に慰撫するんじゃない。蜜の味の舌が体を這う。歯噛みするそれ。ああ、私は何処にいる? お前は誰? 際限のない愛撫が回転する螺旋階段に抉られている。目覚めはまだか。出口はないのか。
へどろが口内を満たしている。黒い血と褐色の唾液が入り交じった甘露の嘆き。咽頭弁が嗤ってる。下鼻甲介の震えは絶妙のハーモニーだ。アモンティラードの渦が私を招いている。潜ってこいよと甘い誘惑の笑みを浮かべてる。眼窩に凍てついた涙の結晶は切っ先となって貴方を刺す。ああ、それだよ、それこそ待ち望んでいた出口なんだ。
違った。全くの勘違いだった。あれは黒檀。違う、タールだ、アスファルトだ、塗り込めている。封じ込めている。大気を遮断している。ダメだよ。息が出来なくなるじゃないか。壁に押し潰されるよ。世界が彼方だ。
感覚が感性が摩耗する日々の始まり。
| 固定リンク
「夢談義・夢の話など」カテゴリの記事
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 雨の中をひた走る(2024.10.31)
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- ローンライダー(2024.10.02)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- 昼行燈121「お萩の乱」(2024.09.20)
- 昼行燈120「小望月(こもちづき)」(2024.09.17)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- 宇宙を彷徨い続ける(2025.01.14)
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- 断末魔(2024.10.01)
- 昼行燈121「お萩の乱」(2024.09.20)
コメント