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2020/03/31

池の底の鏡

春の陽気が濃厚に漂う。晴れ渡った空が広がって憂いほどだ。ここにいる何か。世界を眺めている。が、世界は頓着しない。喚いても泣き叫んでも知らん顔。このまま消え去っても気付きもしない。この無関心はやさしさなのかもしれない。
 ある種の記号が明滅している。電池は消耗して最後の力を振り絞っている。光を浮かべない瞳。記憶を留めない心。世界の片隅で腐った板壁に拾った枝の先で何かを描こうとしている。形に意味があるのか。形を成さないと描いた途端、苔に呑みこまれるとでも云うのか。

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2020/03/29

町の匂いがしない

 足音だけが聞こえる。いや、足音さえ聞こえちゃいない。舗装された道を歩いている感触があるだけだ。…あるような気がする。そう思いたいのだ。大地を踏みしめているといえたら、どんなに感激だろう。だが、何処か夢見心地なままだ。実感があると言えば、胃袋のざわめき。喉のイガイガ。口中の渇き。ショボショボする目。腰の疼き。膝の痺れ。耳が遠くなったのだろうか、通り過ぎた二人の会話の声が風に紛れてしまっていた。口パクでもしてたんだろうか。

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2020/03/23

口内が鍾乳洞に

 昨日未明の夢に、かの松下奈緒さん(ともう一人有名な女優さん)が出てきてくれた。昨日、録画で観た松下奈緒さんらが出演の再放送ドラマの余韻だろうか。これからも、色んな女優さんたちが夢に出演してほしい。夢、こうでなくっちゃ!

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2020/03/21

指はピクリともしない

 今朝、 嫌な夢で目覚めた:(夢が延々と続いていたようだが)気が付くと私はとある会場にいた。何かの試験会場らしい。既に沢山の若い人達が集まっている。でも私は要領が分からずにいる。何故私はここにいるのか……愚図愚図していると誰かが見かねたのか、それとも人の流れを邪魔していたからか、「ほらあっちだよ。あそこにいるだろ!」見ると、数人の人集り。その中の立派な服装……和服の年輩の女性が試験官らしい。

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2020/03/06

私は偏在する塵

 私は風に吹き消された蝋燭の焔。生きる重圧に押し潰された心のゆがみ。この世に芽吹くことの叶わなかった命。ひずんでしまった心。蹂躙されて土に顔を埋めて血の涙を流す命の欠片。そう、そうした一切さえもが神の眼差しの向こうに鮮烈に蠢いている。
 蛆や虱の犇く肥溜めの中に漂う悲しみと醜さ。その悲しみも醜ささえも、分け隔ての無い神には美しいのだろう。

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2020/03/05

俺の口は鍾乳洞

 夜、決まって観る夢がある。口の中に石膏のような味気のない白い塊が詰まる。吐き出したいけど、粘着いて、指で掻き出そうとしても剥がれない。ドアの向こうから足音がする。近所の人か、通り過ぎるだけなのか、それとも、俺に用なのか。足音が段々近づいてくる。まずい、ドアの前で足音が止まったぞ。
 口の中を懸命に穿り返している。粘膜が少々傷ついたって構わない。とにかく抉り出さないと、俺の秘密が知られてしまう。誰にも知られたくない、こんな無様な姿を見られたくない。流しに立って、水道の蛇口を直接口に含んで、石膏を融かそうとした。
 何だってこんなものが喉の奥から出てくるんだ。鍾乳洞じゃないんだぞ、俺の喉は。

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2020/03/04

呆然自失の朝が今日も

 夜陰を通り過ぎ行く人影。折々の月光が沈みがちな影をこの世に引き戻すように浮かび上がらせる。しなだれた木立や崩れかけた板塀は懸命に光を遮っている。黒い塊は痕跡を残すことを恐れているのか。
 何を恐れることがあろう。抉るつもりで地を蹴っても素知らぬ顔のまま闇の中の異物を滑らせているだけ。傷一つ残すことはできやしないのだ。
 お前は光を嫌っているのか。何か疚しいことがあるのか。何処から逃げている。何処へ逃げていく。辿り着く宛てなどないくせに。
 凝り固まった蝋、それとも松脂。琥珀か。命の源が封じ込められているとでも? 嘗めたら水飴の味がするとでも?

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