« ジェネシス 8 ゼンマという奈落 | トップページ | ジェネシス 10 胡蝶の夢 »

2019/01/31

ジェネシス 9 出口なき迷路

Dsc_0293ジェネシス 9 出口なき迷路

 体が椅子に粘り付いている。体の肉やら脂やらが蕩けてしまって、椅子の合皮のカバーに浸潤していく。
 誰もが背を向ける、妙に明るい部屋。いつだったかそこに居たのは間違いないのだが、何処なのか、定かには言えない。友があの人が、オレがいることを知っているくせに、眼中にないかのような会話を淡々と繰り広げる。オレが割って入る余地などない。

 みんな何処へ行ったのだ。オレはここにいる。オレは何処へも行くことができない。この場にへばりつくように、へたり込むように、立ち竦むように呆然としている。救いを求めているに違いない。

 でも、祈るような声は白日の彼方へ拡散していくばかり。
 体の芯に喰い込んだ徒労感。慢性的な疲れ。起きていても眠っているような茫漠感。

 本を手に、白昼夢を追い求めていく。動けない体だからこそ、自由な空を欲する。あの女との、気ままな言葉のキャッチボールを愉しむ……はずなのに、気がつけば悔恨の夢。懺悔の夜。出口なき迷路。開かない扉。光の入らない窓。蝋のような体の女が白目を剝いてオレに微笑む。オレに返す言葉などない。

                (「鈍麻なる闇」より)

|

« ジェネシス 8 ゼンマという奈落 | トップページ | ジェネシス 10 胡蝶の夢 »

小説(オレもの)」カテゴリの記事

夢談義・夢の話など」カテゴリの記事

創作(断片)」カテゴリの記事

ジェネシス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジェネシス 9 出口なき迷路:

« ジェネシス 8 ゼンマという奈落 | トップページ | ジェネシス 10 胡蝶の夢 »