ジェネシス 6 雪の朝の冒険
入院前までは姉と一緒の部屋だったけど、ボクの鼾があまりに煩くて眠れないと、姉が親に談判。ボクは、独りぼっちで寝始めていた。
ボクには、手術して以来、夜はなくなった。睡眠ではなく、真っ赤な闇との徹夜の闘いに成り果てていたのだ。起きるとは、熱っぽい闇から、白けた日常へ追いやられる、それだけのこと。
誰にも気付かれず、こっそり家を出た。退院のお祝いだったか、スキー板をプレゼントされていた。雪は止んでいた。たっぷりと雪が積もっている。何処かへ行かなくっちゃ! 田圃も畑も、畦道も、用水路だって、雪にどっぷり埋もれて、そう、純白の部厚い布団を被っているよう。世界が真綿でくるまれている。ボクも包んでくれるに違いない!
雪原は何処までも、果てしなく続いている。曇天の空と雪の野との境は曖昧に、そう、真っ白な地平線が生まれたようだ。富山とは思えないようなパウダースノー。スキー板がやんわりめり込む。雪けむりを掻き立て滑りたかったけど、下手くそなボクにそんな真似ができるはずもない。
(断片)
(本作は、拙作「真冬の明け初めの小さな旅」の裏版である。仕事中にメモったので、尻切れトンボに終わっている。)
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 昼行燈125「夢の中で小旅行」(2024.11.26)
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 雨の中をひた走る(2024.10.31)
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
「小説(ボクもの)」カテゴリの記事
- 昼行燈116「遠足」(2024.08.27)
- 昼行燈113「里帰り」(2024.08.13)
- 昼行燈106「仕返し」(2024.07.29)
- 昼行燈103「おしくらまんじゅう」(2024.07.23)
- 昼行燈7(2023.09.29)
「小説(オレもの)」カテゴリの記事
- 昼行燈120「小望月(こもちづき)」(2024.09.17)
- 昼行燈107「強迫観念」(2024.07.30)
- 昼行燈106「仕返し」(2024.07.29)
- 昼行燈98「「ラヴェンダー・ミスト」断片」(2024.07.14)
- 昼行燈96「夜は白みゆくのみ」(2024.07.09)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- 昼行燈123「家の中まで真っ暗」(2024.10.16)
- 昼行燈122「夢…それとも蝋燭の焔」(2024.10.07)
- 昼行燈121「お萩の乱」(2024.09.20)
- 昼行燈120「小望月(こもちづき)」(2024.09.17)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
「ジェネシス」カテゴリの記事
- 昼行燈124「物質のすべては光」(2024.11.18)
- 昼行燈118「夢魔との戯れ」(2024.09.05)
- 昼行燈115「ピエロなんだもの」(2024.08.26)
- 昼行燈112「サナギ」(2024.08.12)
- 昼行燈111「長崎幻想」(2024.08.09)
コメント