ジェネシス 6 雪の朝の冒険
入院前までは姉と一緒の部屋だったけど、ボクの鼾があまりに煩くて眠れないと、姉が親に談判。ボクは、独りぼっちで寝始めていた。
ボクには、手術して以来、夜はなくなった。睡眠ではなく、真っ赤な闇との徹夜の闘いに成り果てていたのだ。起きるとは、熱っぽい闇から、白けた日常へ追いやられる、それだけのこと。
誰にも気付かれず、こっそり家を出た。退院のお祝いだったか、スキー板をプレゼントされていた。雪は止んでいた。たっぷりと雪が積もっている。何処かへ行かなくっちゃ! 田圃も畑も、畦道も、用水路だって、雪にどっぷり埋もれて、そう、純白の部厚い布団を被っているよう。世界が真綿でくるまれている。ボクも包んでくれるに違いない!
雪原は何処までも、果てしなく続いている。曇天の空と雪の野との境は曖昧に、そう、真っ白な地平線が生まれたようだ。富山とは思えないようなパウダースノー。スキー板がやんわりめり込む。雪けむりを掻き立て滑りたかったけど、下手くそなボクにそんな真似ができるはずもない。
(断片)
(本作は、拙作「真冬の明け初めの小さな旅」の裏版である。仕事中にメモったので、尻切れトンボに終わっている。)
| 固定リンク
「心と体」カテゴリの記事
- 米研ぎに注射の夢に(2021.02.17)
- 麻酔は未だ効いてない(2021.01.03)
- 辿り着けない(2021.01.01)
- 首都高速に迷い込む…夢(2020.11.18)
- ボクの世界は真っ赤な闇(2020.10.16)
「小説(ボクもの)」カテゴリの記事
- ボクの世界は真っ赤な闇(2020.10.16)
- マスクをするということ(2020.05.11)
- 夢は嘘をつかない(2020.05.10)
- ジェネシス 7 先生(2019.01.27)
- ジェネシス 6 雪の朝の冒険(2019.01.25)
「小説(オレもの)」カテゴリの記事
- ボクの世界は真っ赤な闇(2020.10.16)
- マスクをするということ(2020.05.11)
- 夢は嘘をつかない(2020.05.10)
- 私は偏在する塵(2020.03.06)
- 呆然自失の朝が今日も(2020.03.04)
「創作(断片)」カテゴリの記事
- タールの彼方(2021.01.24)
- ボクの世界は真っ赤な闇(2020.10.16)
- 赤い闇(2020.10.15)
- 真夏の夜の夢風なモノローグ(2020.08.09)
- マスクをするということ(2020.05.11)
「ジェネシス」カテゴリの記事
- ジェネシス 10 胡蝶の夢(2019.02.04)
- ジェネシス 9 出口なき迷路(2019.01.31)
- ジェネシス 8 ゼンマという奈落(2019.01.29)
- ジェネシス 7 先生(2019.01.27)
- ジェネシス 6 雪の朝の冒険(2019.01.25)
コメント