ジェネシス 1 (序)
ジェネシス 1 (序) 引き裂かれた大地
引き裂かれた大地に転がされていた。とっても小さな石ころだった。
大地だったのだろうか。ただの沼地だったのではないのか。
歓喜のはずが呪詛の眼差しが我が身を貫いた。射貫くように、目を背けるように。
産みの女神は御加護を与えてくれるはずの天女から一気に見放された。軽蔑された。なかったことにしろと命じる鬼の眼があるばかりだった。
赤い闇から捻り出された血だらけの、皹の入った石ころには、この世の光は呪詛であり、怨念であり、忌避の祈りの伽藍洞だった。
神々しい、黄金の光に満ち溢れた、真冬の僻地で、それは密かに産湯に漬けられた。生温かなお湯が穢れを拭い去ってくれるはず、祝福の抱合が叶うはずだったのだ。
が、沈黙の海にさっさと沈められるのだった。このまま、浮かび上がらなければいいと、誰しもが思った。
何もなかったのだ。あったのは、夢。悪夢。叶わぬ夢。あの世への懇願。闇のない、まっさらな時空。
儀式は粛々と執り行われた。人々は去り、悲しみと怒りと、濡れそぼつ喜びが胎盤にも似た洗面器の中で煮込まれていた。
始まったのだ。何かがもう一つの宇宙から我々の宇宙へ侵入してしまったのだ。
である以上は、始めないといけない。その先に何があろうと、あるいはなかろうと。
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