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2019/01/22

ジェネシス 4 ゼンマ明け

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 そのことが何を意味するのか。
 それは、ほとんど生まれて初めて熟睡を経験したということである。
 小生は、十歳の時の手術で鼻呼吸ができなくなった。
 当然ながら、睡眠時無呼吸なわけである。
 睡眠時無呼吸症候群というのがあるらしいが、小生は端的に睡眠時は口呼吸だけ。
 なので、目覚めの時は疲れ果てている。疲労困憊なのだ。

 試しに、息を止めて一分でも二分でも頑張る、そんな遊び(?)を試みたことがあるかもしれない。
 それが結構、きつい体験だということは実感で分かるだろう。
 小生の場合、睡眠時にはずっと何回もそれを繰返すわけだ。

 40歳での全身麻酔での手術で、手術が無事、完了して、病室で意識が戻った時、とっても爽やかだった。
 最初は、点滴で体の血が綺麗になったからかな、なんて暢気に思っていた。手術が無事だとも聞いたから安心したこともあって。
 でも、そうじゃなかった。
 全身麻酔で人工呼吸したので、普段の一晩中の睡眠時無呼吸による体(や脳味噌)へのとんでもない負担が、その夜に限って、人工呼吸での呼吸をちゃんと出来ていたから、だから、体が疲れ切ることはなかったのだ!

 熟睡って、こんなことだったのかと(ほとんど)生まれて初めて知った。
 ほとんど、というのは、十歳の手術の時までは鼻呼吸ができていたから、熟睡も出来ていたはずだからだ。
 でも、小生には十歳以降の、眠る前より起きた時こそが一番、体が疲れきり体力を消耗しきった状態となるという睡眠をずっと経験してきたので、十歳以前のことはもうわすれちまった。
 朝の目覚めの時、そして起き上がるとき、小生は体力を使いきってしまう。精力の大半を起きるために使い果たす。
 ようやく起きた時は、もう、ボーとしている。日中にしても、昼行灯である。精も根も尽き果てているのだから当然なのだが。

 それだけに、グッスリ眠れたゼンマによる手術の日の夜が、朝の目覚めが自分には驚異だった。みんな、こんなふうに眠れているんだと、しみじみ羨ましいと思った。

 この、十歳を過ぎてからのただの一度限りの体験!

  (「懐かしき(?)ゼンマ明けの朝」より)

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