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2019/01/29

ジェネシス 8 ゼンマという奈落

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 肝心の全身麻酔をされての体験のこと。

 ゼンマをされるのは初めてじゃないのに、麻酔が効いてくる感じがまるで予想と反していた。
 予想といっても、子供の頃の麻酔体験しかないから、その時の状態とは麻酔の効き方が違う! と感じていたのである。

 徐々に意識が遠退いていくとか、そんな感じではなかった。

 体の遠い部分から、体が泥か鉛か、とにかく肉体とは異質な何かへ完全に変質していくのである。
 体が重いようであり、しかもさらに重くなっていくようであった。

 ああ、もしかして肺も含めた内臓が死んでいってしまう、後戻りできない闇の世界へ落ち込んでいってしまう。
 肺もゴムのように、それも弾むことを忘れた死んだ固いゴムのように変貌し、息もできなくなってしまう。
 麻酔は脳にも効くのだろうか。意識が遠退いていくような、それでいて、最後まで明晰(といっても、小生の頭脳がそんなに明晰なはずはないのだが、その時だけは醒め切っているように自分では感じられて)、肺が心臓が麻酔でどうにかなる、その前に意識が遠退いてしまうと思っていたのに、そうではなかった(ように感じられた)のである。
(「懐かしき(?)ゼンマ明けの朝」より)

 鉛色の海の底には……

 そこには、圧倒するわけの分からない、掴み所のない、闇雲な、どうしようもない、ひたすらに数万気圧の圧力に平伏すしかない物質的な精神の宇宙がある。自分という存在が仮初にもあったとしても、気が付いた時には、圧力に踏み潰され、ペラペラの存在になってしまっている。自分に厚みも温みもこの世界との和解の予感の欠片も失われている、そんな無力な我がある。
(拙稿「W.ブランケンブルク著『自明性の喪失』」より抜粋)

[冒頭の画像は、フュースリー『夢魔 The Nightmare 』(1781年) (画像は、「ヨハン・ハインリヒ・フュースリー - Wikipedia」より]

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