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2019/01/19

ジェネシス 2 ラブシーン

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 茶の間。家族でテレビを見ている。何かのドラマ。ラブシーン。
 俺は決まって、まるで照れているかのように、顔を覆い隠す。
 みんなは恥ずかしがってるんだと、微笑ましそうにしている。
 違うのだ。自分には、一生、金輪際、女性と唇を合わせることはないだろう、という確信(人はそれを思いこみとみなすかもしれないが)がなせる業なのだ。

 口唇口蓋裂の自分。醜い無様な治療の痕がまざまざと残っている鼻、鼻の下、唇。そして穴の開いたままの口蓋。
 保育所時代には俺は人生を諦めていた。人並みの人生などありえないと思い込んでいた。
 誰が、そう、思い込ませたのだろう。
 親たち? 姉たち? 近所の人たち? 近所の遊び友達たち? 保育所での体験?
 もう、記憶の彼方である。
 それとも、単に鏡を見ての結果なのか。

 こんな顔の俺と誰が真正面から向き合うだろう。親たちだって、俺と話をするときは、決して視線を合わさない。どこか他所を眺めながら、耳だけ懸命にこちらに向ける。
 発音が極端に悪いからだ。親姉妹だって何を言っているか分からないことがしばしばなのだ。
 でも、俺が喋っていることを理解してもらえないとなると、機嫌の悪い赤ん坊のように泣き喚く。

 そんな俺を持て余してきた。だからせめて、喋っていることは聞き逃すまいと真剣。
 だから耳を聳てる。それがオレには、目線を避けていると思えてならない。
 話をするなら、他のみんなと同じように、こっちを見てくれよ!
 そう、叫びたいのを俺は俺で必死で堪えている。

 話が逸れてしまった。
 そんな俺と誰がいつか唇を合わせるものか。そもそも、まともに向き合ってくれる人だって現れることはないだろう。
 ラブシーンを横目にしながら……そう、俺は決して見逃してはいない……諦めきって泣いている自分の顔を、表情を隠していたのだ。

                  (2019/01/18 作

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