君はピエロ 僕もピエロ
きみに恨みはないのに、君に鬱憤を晴らしている。
いや、そんなつもりはないんだ。ぼくには何も見えないんだよ。
ああ、ぼくは臆病なだけなのさ。
ぼくにも心があれば、あるって信じたいんだけど、君を追いかけていったに違いない。追い縋って、ぼくを助けてくれ、ぼくを見捨てないでくれって、泣き叫んでいたはずなのに。
ぼくの心って奴は、縮こまってしまって、どうにも解せなくなって、脳味噌の隅っこで、頭蓋の底で、眼窩の縁で黒子(ほくろ)のようにへばりついている。
君の姿さえ、見えない。見えているのに、見えない。
ぼくを励ます君。色とりどりの、ホント、派手な衣装を身に纏って、氷の中で踊っている。
今にも息絶えそうなのは、君のほうじゃないのか。風雨に擦り減った夏服を真冬に羽織って、寒々しいったらありゃしない。
動かないといけないのは、ぼくなんじゃないか。
路上に倒れ込む君を幾度ぼくは見捨てたことか。泣き崩れる君を石ころのように蹴飛ばしたぼくだった。
ああ、ぼくは悲しいのだろうか。淋しいのだろうか。臆病なんかじゃなく、滑稽なのはぼくのほうじゃないか。
嗤ってくれよ、ぼくのこと。
コンビニの寒々とした蛍光の光さえ、ぼくには届かない。君の後光のような輝きは、ぼくには眩しすぎる。
路傍の花の君。路肩をわざとのように無視するぼく。
そんな恋なんて、あっていいのだろうか。
ああ、君はホントにピエロだよ。そしてぼくもピエロだ。
*本稿に掲げた作品は、いずれも「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」中の「ギャラリー2016」より。
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