終わりはない
闇の世界の濃密さを誰も知らない。ねっとりとした闇に一歩、踏み込むと、もう二度と元に戻れない。
→ お絵かきチャンピオンさん作「 」 (同氏のホームページ:「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」)
目も眩むような白日の世界は、湖が大地に抱かれているように、闇の海に浮かび漂っている。
そう、星だらけの闇夜のように。
癒しを求めて、愉楽を求めて、それとも救いを求めて、あなたは闇を見つめる。
あなたは、闇を見つめているんじゃない、闇の中の真実、希望の光である星を凝視しているのだと、きっと言い張るだろう。
いいだろう、あなたがそう言うのなら、そう思いたいのなら、それでもいい。わたしには同じことなのだ。
闇の海には無数の顔たちが犇めいている。これまで生まれ死んだ数知れない命の躯が蠢いている。
もう、闇の世界には隙間もない。もう、誰一人、受け入れる余地はないくらいに、魂魄たちがギューギュー詰めになっている。
まだ生きていると思っているあなたを見つめ、うらやましいと思っている愚かな顔、早くこっちに来いよと待ち草臥れている顔、手ぐすね引いて待ちかねている顔、あの世の悦楽ぶりに、あなたのことなど知ったことかと我を忘れている顔、心残りのあまり、怨念の塊になっている顔、この世もあの世のことも嗤い飛ばしすぎて干からびたピエロになっちゃった顔、この世を見つめすぎて、目を見開きすぎて、目玉しかない顔。
なんて賑やかなことか。闇の海はもう、それこそ五月蠅いほど、ピーチクパーチク、ハチの巣だ。
もしかしたらあなたはもう死ねないかもしれない。あなたの余地はあの世にだってもうないのかもしれない。ギチギチに詰まって、おしくらまんじゅうになっていて、闇の海に受け入れられ沈み込むなんて夢のまた夢で、あなたは永遠に闇の海の波間に漂い続けるしかないのかもしれない。
そう、あなたは永遠に苦しみ続ける。あなたの悩みに終わりはない。終わりはないのだよ。
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