Yosikiのギャラリー ざらざらした大地へ
この世界は広いって、つくづく感じることがある。
別に地球儀を見て、改めて気付いたってわけじゃない。
→ 「木目の顔 Face of the grain」 (画像は、「Yosikiのギャラリー 木目の顔」より) (ホームページ:「Yosikiのギャラリー ―魂の在り処、精霊の棲み家ー」)
ただ、自分がこの世界の中にポツンと放り出されている。自分があまりにちっぽけ で、世界どころか、自分の周囲さえ、ろくに見通すことができないことを、何故か不 意に実感してしまったのだ。
きっと自分の心があまりに窮屈で、それに臆病なものだから、井戸の中にいて、四 角く限られた天を眺めやることに慣れ過ぎたんだろうと思う。
もっと大きな切っ掛けは、世界の遠く離れた世界にあの人が行ってしまったってことだ。ほんのついこの間までは、自分の目の前にいたし、昨日、会い、今日 も会ったのに、明日は、決して会えないことに気づいた瞬間、私は、ふいに世界が広すぎるってことに、初めて気付かされたんだ。
← 「壁のささやき Whisper of wall」 (画像は、「Yosikiのギャラリー 壁のささやき」より)
世界が、たとえ真っ昼間であってさえも、時には真っ暗闇に陥ることのあることを、 私は、知ってしまった。あの人の残像が、あまりに鮮やかに脳裏に浮かぶ。あの人の 面影が、今、目の前にある陽だまりよりも目を滲ませる。
世界でたった一人の人、かけがえのない人、そんな人を失った瞬間、世界はまるで 馴染みのない、余所余所しい世界へと変貌してしまった。道行く人が、みんな用事がある。それも、少なくとも自分には関係のない用件を抱えて急いでいるように見える。 みんな誰かに会いに行く。けれど、間違っても、この私じゃないことは、表情を見れば分かる。
世界は伸び広がったんだ、あの日を境に。ますます広がっていって、昨日の自分さえ、他人と思われたりするようになる。私とは、今の、茫漠たる掴み所のない靄。昨日も明日もない。吐き出したいほどの孤独感。
→ 「壁に絵画 Painting on the wall」 (画像は、「Yosikiのギャラリー 壁に絵画」より)
その清冽な感覚は、自分をさえ満たしてくれない。
私とは空白。
世界でたった一人の人を見失って、私は自分をも手放したんだ。
どこまでも拡張していく宇宙。いつまで経っても拡大するだけの宇宙。
ある日、ふと、あの人の影が私の心をかすめていった。手を差し出したら触れられ ると、思った。勇気を出して手を出したよ。
あの人は、いなかった。ねじれの位置であの人は、見知らぬ誰かに微笑みか けるだけなんだ。もう一度、冗談でもいいから私に微笑みかけてほしい。
交差する二つの直線は、もう、決して交わることはない。世界は三次元。 否、四次元。否、もしかしたらそれ以上の次元が輻湊している。私は、白い闇の海の底で、海の上の大気を思う。
← 「路上の銀河系 Galaxy on the street」 (画像は、「Yosikiのギャラリー 路上の銀河系」より) 彼のことは、ネットで発見した:「yosiki よしきさんはTwitterを使っています 木目の顔 Face of the grain http--t.co-JcrSEX3XPe http--t.co-s2581qMl3h」
もう、歩きたくない。歩けば歩くほど、あの人から遠ざかるのだから。
でも、私は歩く。生きているということは、歩くってことなのだ。
私は歩く。ざらざらした大地をひたすら、そう、舐め尽くすように歩き回る。
(原文は、「私は歩く人」(01/11/30)より。一部改変)
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