ピンクの裸婦
刀身が浮かび上がる。闇を刺し貫くように。
闇が凍て付き、刃となったのだ。研ぎ澄まされ、やせ細り、スカスカとなって、今じゃガラスの裸身を晒している。
→ お絵かきチャンピオン 作「おはーーーーーーーーーーーーーな」
中には何もない。魂さえ、逃げ出そうとしている。
ビーズ玉たちの乱舞。五弁花の花びらたちの涙のようだ。
オレは淋しくてならなかった。色が欲しかった。闇だからって、色があって悪いわけがあろうか。
色。その色は何処にある? 闇の中をまさぐっても、手の平にはザラザラした壁面が感じられるだけ。
壁。オレは閃いた。そうだ、手の平を壁に押し付けるのだ。いや、擦り付けるのだ。いや、それだけじゃ足りない。鑢の壁面で手の肉をどこまでも摩り下ろすのだ。
闇はオレに同情したのか、やがて刀身に血が滴るのが見えた。
刃が火照り始めている。切っ先が肉付き始めている。
← お絵かきチャンピオン 作「ピンクの裸婦」 ホームページは、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」
気がつくと、闇の時空さえもがピンク色に染まってきていた。
そうか、闇の血肉が刀身に降り注ぎ、こびり付き出していたのだ。
刃は丸みを帯び、乳房さえ形を成し、浮かび上がってきたのは、ピンクの裸婦だった。そうか、オレが餓えていたのは、これだったのだ!
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