アガパンサスは愛の花
乾いている。飢えているといってもいいほどに。
ただ、何に餓えているのか、分からない。
→ 草露 (画像は、「草露 日々是電脳写真」より)
ひもじいわけじゃない。食べたいものを食べているわけじゃないけど、腹だけは満たすことができる。
会いたい人に会えない…。そうなのかもしれない。
でも、会いたい人が誰なのか、分からない。
正体が見えない。闇の向こう。霞の彼方。
会えないのは、生きることに怯えているからなのか。己の愚かしさに辟易しているから?
何を今さら。飢えているなら、がつがつと食い意地が張るはずじゃないか。
お前は何を恐れているのか。
命。女の血。耐えきれぬ焔。
あまりにこんがらがって、何が何だか分からずにいる。迷っている。何に迷っているのか、それすら分からずに。
一滴の水。水滴。雫。乾ききって、ミイラの心のようだ。
パサパサの皮膚。下手すると、一滴の雫がこの身に垂れただけで、一瞬にして体が砂漠の砂のように崩れ去ってしまうと予感しているのか。
← 小雨に濡れそぼつアガパンサス アガパンサスとは、「愛の花」という意味。(画像は、『梅雨空もアガパンサスの花の色』(2009/07/09)より)
ああ、でも、お前が欲しいのだ。抱きしめたいのだ。血潮にしがみつきたいのだ。
水盤の底のオレの顔。歪み切って、原形を留めなくなっている。自分でさえ自分を見失っている。
そんなオレをどうやってお前に見つけられるというのか。
(「アガパンサスは愛の花」(2015/06/01)より)
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