氷の町
語ろうとすると、喉が痛くなる。顔が引きつってしまう。言葉が凍て付く。
カチンカチンの言葉が体の中で行き場を失っている。もう、あちこちグルグルぶつかって、血の渦を巻き起こす。
← 小林たかゆき作「2012_073」 (画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
喋ることがこんなにも苦しいなら、ボクはもう何も望まない。望むと心が急いて、思わぬ言葉が口を衝いて飛び出そうとするんだもの。
でも、沈黙が怖い。ボクは臆病者なんだ。だから、部屋から飛び出して、氷の町に彷徨い出たんだった。
誰かに会いたいよー。誰かと言葉を交わしたいよ。さよならの一言でいいんだから。
蒼白の町に聞こえるのは吹き荒ぶ風の音だけ。
ああ、言葉を交わしたいなんて、ホントは嘘っぱちなんだ。誰かの熱いからだが欲しいんだ。温もりが欲しいんだ。とっくの昔に忘れちまった感覚。人間の肌。血肉の匂い。汗と涙。
→ 小林たかゆき作「2012_071」 (画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
マグマ溜まりのようなあの部屋で、ボクは血汐を浴びるほどに呑んだ。溺れるほどに真っ赤な分厚い闇の海に飛び込んでいった。
その挙句が、このざまだ。
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