サナギ
剥き出しなんだよ。裸じゃないか。皮膚さえ剥がれて。
まっさらのこころ。まっさらすぎて、この世では淡雪の如く、生まれた瞬間から手足の先が融けていく。
← 4腕から6腕への途中。胃が珪藻でいっぱいです。(画像は、「いろいろな時期のプルテウス幼生」より)
顔が蒸気のように大気に呑み込まれていく。
自分でも嗤っている。可笑し過ぎて涙もでない。
滑稽だ。
何が滑稽って? 形が定まらないんだもの、嗤わずにいられないじゃないか。
→ Jesse Reno作「Magic In The Breeze」(12" x 12" on wood acrylic, oil pastel, pencil and collage)
こんな奴でも、ほんの束の間、姿を現す瞬間がある。
それは凍て付く日のこと。
陽光さえも、お前にはすげなくする、そんな日のこと。
← ジェシー・リノ(Jesse Reno)作「Ice」(9" x 9" on wood acrylic, oil pastel, pencil and collage) オレゴン州ポートランド在のアーティスト。小林たかゆき(お絵かきチャンピオン)さんのツイッターで知った。
紫外線が氷の台座の上のお前を刺し貫く、そんな北風の吹いている日のこと。
氷の中の花を取ろうとした奴の姿が一瞬、夢幻のように浮かびあがったのだ。
それは、蛹(さなぎ)だった。甲殻を毟られ、手足も繊毛と見紛うような儚さ。卵の中で眠っていたはずの未成の命が引きずり出されてしまった…お前にはそう見えたってね。
→ ジェシー・リノ(Jesse Reno)作「Larva(幼生サナギ)」(18" x 12.5" on wood acrylic, oil pastel, pencil and collage)
糸杉の天辺に串刺しになって、カラスたちにやわらかすぎる腸(はらわた)を啄まれている。ホントに滑稽というか、哀れというか、まあ、凝視するしかない光景だった。
嗤いは松の葉を揺らし、鏡の面(おも)を響かせ、真空の空を突き抜けていった。
お前、無防備すぎるよ、誰だって嘲笑うにきまってるよ、そんな透明な肉の身じゃ。
← Jesse Reno作「Upside Down Volcanoe Glob」( 9" x 41" on wood acrylic, oil pastel, pencil and collage)
ああ、すり身が皿の上で泣いている。何処までも薄く切られて、透き通っている。
それなのに、ボクは食べなくちゃならない。お腹が空いているんだもの、仕方ないよね。
じゃ、いただいちゃうよ、いいね、いいよね。
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