壁際の花たち
歪んだ命。踏みつけられた心。草葉の陰の体。
命は砕けた岩の隙間を縫うようにして這い上がる。光へと。上へと。真っ直ぐ。
← お絵かきチャンピオン作「赤目顔スーパー」 (この絵の画き手をもっと知りたい方は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」を参照のこと。以下同様)
どんなに踏みつけにされても、命は毛細管現象を生きる。駆り立てられて。あるいは生き急ぐように。
光ある世界へ。地を毛嫌いすることもなかろうに。
なのに、光の世界は眩さに圧倒されて、多くの女は萎えてしまう。皮膚から浸潤する酸。脆くも崩れゆく骨。
萎びた心のように、女は光あふれる部屋の片隅で縮こまる。ブラウン運動する人魚たち。
→ お絵かきチャンピオン作「光の届かないエリア」
陰影は残酷だ。色を失った女は、誤魔化すことを知らない。表情を失ってしまう。そこにあるのは、オンとオフ、陰と陽、正と邪、睫毛と涙に溶けたマスカラ。
黒炭を掻き削るようにして壁面に描かれる命の軌跡。炭の粉塵は、肉の身に滲む血のようだ。それとも壁への吐血。
コサージュは骨格の縮図。
失われた色は何処へ消えた。垂れた体色は黒い雨のように乾いている。肺胞を埋め心を窒息させる。ロートレックの憤激を嘲笑う。
← お絵かきチャンピオン作「集」
影の世界のダンサーたち。幽霊の踊り。霊魂を弄ぶ。抜け殻たちの束の間の癒しは嘆きのように透明だ。
カラフルな嫉妬。うらぶれた悲しみ。純然たる愚かしさ。届かない祈り。
色が色を失って、皆既月食の闇夜に葬られていく。色の輝きは褪せ、丑三つ時の聖櫃が輝きを放つ。
慰め合う惨めさをみんなが嗤っている。
ああこの滑稽なる人生!
(「この滑稽なる人生!」(2014/10/09)より)
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